研究課題/領域番号 |
19K08688
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
林 香 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (60445294)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | DNA損傷修復 / DNAメチル化 / 慢性腎臓病 / 腎老化 |
研究実績の概要 |
本研究では腎老化および腎老化をベースとして発症するCKDの病態における、ポドサイトのDSBおよびエピゲノム変化の役割を、ポドサイト特異的DSB誘導マウスおよび腎生検検体を用いた検討により明らかにすることを目的とした。 本年度は、ポドサイト特異的IpPoI発現マウスを作成し、DNA損傷修復を繰り返し惹起したマウスの検討を継続した。本マウスは6週齢前後から有意なアルブミン尿の増加を呈し、 電子顕微鏡写真ではポドサイト足突起の広範な癒合が認められたが、興味深いことに糸球体、尿細管間質にCD11b陽性細胞単球・マクロファージの浸潤を認め、この組織所見は2歳齢の老齢マウスの所見と類似しており、腎老化のモデルとなっている可能性が考えられた。本マウスはその後20週齢前後までに急減期に腎機能が増悪し、半年程度で腎不全により死亡することが分かった。本マウスの単離ポドサイトを用いてRNA-seqを施行した結果、インフラマソーム関連遺伝子発現の上昇を認めた。また、単離ポドサイトのDNAメチル化は全体的に亢進しており、現在MeDIP-seq解析を行ってDNAメチル化部位とDNA損傷部位の関連、メチル化変化部位(MDR)の同定を進めている。次年度も引き続き本マウスモデルを用いて、DNA損傷修復とエピゲノム変化、および老化やCKD病態との関連を明らかにしていきたいと考えている。 また腎生検検体を用いた検討に関しては、当初の計画に沿ってMinor glomerular abnormalitiesおよび膜性腎症の症例の検体で、二本鎖DNA損傷とDNAメチル化、腎予後との関連について引き続き検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
組織特異的トランスジェニックマウスのため、遺伝子改変マウスを得られるスピードはそれほど速くないが、現時点では大きなトラブルはなく遺伝子改変マウスの解析は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度はまず、ポドサイト特異的IpPoI発現マウスのより詳細な解析を進めていく。具体的には、単離ポドサイトを用いたMeDIP-seq解析によるDNAメチル化部位とDNA損傷部位の関連、メチル化変化部位(MDR)の同定を行う。更にCD11b陽性細胞浸潤を認めたが、シングルセル解析を用いて変化を担う細胞群をより詳細に検討する。以上により腎老化におけるDNA損傷 とエピゲノム変化、表現型変化とのつながりを明らかにしたいと考えている。
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