研究課題
最終年度は、ゲムシタビンやタクロリムスなど血管内皮傷害を誘発する薬剤に暴露された培養内皮細胞(HUVEC)の超微形態変化について観察を行った。コンフルエント期のHUVECにこれらの薬剤を48時間暴露後、グルタールアルデヒド固定後にアルコール脱水し、臨界点乾燥後オスミウム蒸着し、低真空走査型電子顕微鏡で観察した。これらの暴露によって、細胞境界部が所々で離開し、離開部に長い微絨毛突起が形成されていた。この構造物は細胞移動時のフィロポディアに類似していた。細胞間の理解は接着帯やデスモゾームなどの細胞装置の破綻が推察された。この変化はヒトの腎生検で内皮傷害時に電子顕微鏡で観察される内皮下浮腫や内皮の網状化(reticulosis)に関係している可能性が伺われた。ゲムシタビンとタクロリムスの影響の違いについては、走査電子顕微鏡観察では違いは明らかでなかった。研究期間全体を通して,我々は抗癌剤であるゲムシタビンによるin vitroの血管内皮傷害モデルを確立し,血管内皮表層におけるグリコキャリックス(GCX)の可視化と存在する糖鎖末端のシアル酸に着目した内皮機能の変化を明らかにした。内皮細胞はGCXに含まれる糖鎖が恒常性の維持に関わっており,糖鎖修飾の変化が炎症性サイトカインなどの産生に影響を及ぼし,血管傷害の促進や抑制に関わっている可能性がある。これらの知見は内皮GCXに着目した血管保護療法の開発への糸口になり得ると考えられる。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (18件) (うち招待講演 3件)
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