研究課題
IgA腎症(IgAN; IgA nephropathy)は,わが国に高頻度に認める慢性糸球体腎炎で,20年の経過で約40%が末期腎不全に陥る。IgAN患者では,血中に糖鎖異常IgA1(Gd-IgA1; Gal-deficient-IgA1)が増加し,このGd-IgA1を中心とした免疫複合体が糸球体に沈着し腎炎を生じる。Gd-IgA1を検出するモノクローナル抗体(Gd-IgA1 mAb)によってGd-IgA1の糸球体沈着はIgANに特異的に認めることが明らかとなり,Gd-IgA1は病因に深く関与すると考えられる。そのため糸球体沈着性Gd-IgA1の正確な糖鎖構造解析は病因解明やバイオマーカー開発に不可欠である。本研究では,Gd-IgA1の役割の解明とバイオマーカー応用を目指し,①IgAN患者の沈着IgA1の糖鎖構造を同定(糸球体沈着性Gd-IgA1の構造同定),②前向きに採取した臨床検体を用いてGd-IgA1の臨床的意義を検討,③POCT (Point Of Care Testing) 試薬によるGd-IgA1検出を単独バイオマーカーとして開発する。2019年度は,血中IgA1ヒンジ部糖鎖の定量的プロファイリングと糖鎖修飾部位の定量的評価法を開発し論文報告した(Sci Rep 10, 671, 2020)。
2: おおむね順調に進展している
2019年度は解析基盤を形成した。同時に迅速検出法についても複数の方法で検討を行った。沈着IgAは組織からのIgAの回収量が極少なく糖鎖解析には不十分であった。
沈着IgAは組織からのIgAの回収量が少なく糖鎖解析にはさらなる条件設定を行う。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件)
Scientific Reports
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https://doi.org/10.1038/s41598-020-57510-z
Glycobiology
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