研究課題
慢性腎臓病(CKD)のfinal common pathwayとしての尿細管間質線維化修復過程に、免疫を負に制御するB細胞サブセットである“制御性B細胞(Breg)-interleukin-10(IL-10)系がいかに作用するか、どの分化過程のB細胞が腎障害進展阻止に重要かについてその機序を明らかにし、新たなCKD治療ストラテジーを確立するための実験を行った。まずはIL-10産生GFPマウスを使用して、急性尿細管壊死を引き起こすAKIマウスモデルである、再還流障害(IR)モデルを作成した。まず作成1日後の腎臓へのIL-10産生細胞を検討したところ、尿細管間質に細胞を確認することができた。さらにFACSにてIL-10産生細胞の由来を確認したところ、腎臓ではdetectできなかったものの、脾臓にてその産生細胞の増加を認めたため、脾臓がIRによる腎障害時の腎保護的臓器であり、組織修復に働くIL-10の産生細胞の由来と考えられた。しかしながら、再現性に乏しかったため、さらに7日後のIL-10産生細胞の発現を検討したところ、mRNAレベルで有意に上昇していることがわかった。今後はIR7日目の腎組織障害の程度とIL-10産生細胞のなかでもBregの存在について詳細に検討していく予定である。
3: やや遅れている
当初は脾臓がIL-10産生細胞の由来細胞が存在すると考えていたが、再現性が取れず、実験系が安定して検討した結果、脾臓にはIL-10産生細胞は増加していなかったことが判明した。このことは、脾臓以外に腎臓へもたらされたIL-10細胞の起源が存在することを示しており、その検討を開始したところである。以上より、当初の計画よりやや遅れているものの、negative dataであったとしても有益な1年であったと考える。
現在、IR7日目においてIL-10の発現がかなり上昇していることが判明したため、腎臓においてIL-10産生細胞がBregであるか否かの検討を二重免疫染色にて確認する。さらに腎障害との関連を検討する。その後、Bregを調節することによるIR由来の腎組織修復を検討するために、BregをFACSにて採取し、腎動脈からIR前に注入することにより、組織障害が軽減するかを検討する。今後は細胞注入療法の有用性を確認することにより、より実臨床に向けた研究に発展させていきたいと考えている。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件)
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