研究課題
急性腎障害は不可逆的な腎組織障害を起こす。その主座は尿細管間質障害であるが、修復過程に関する報告は少ない。急性腎障害おいて調節性サイトカインである Interleukin-10 (IL-10) が腎機能障害を抑制し得る可能性が報告されているが、その主要産生臓器は明らかではない。よって、まず最初に腎虚血再灌流障害モデルマウスに対するIL-10主要産生部位の特定を行なった。方法はGFP / IL-10レポーターマウスを用いて腎動脈結紮による腎虚血再灌流障害モデルを作製し、IL-10リクルート臓器として脾臓の有無による腎障害を評価した。その結果、IRIで腎組織におけるIL-10遺伝子発現は有意に増加した。血清IL-10はsham群では有意な変化はなかった。また、IRIにおいて脾摘による腎組織内IL-10の有意な変化は認めなかった。IRI 24時間後の腎組織障害度は脾摘群で有意に高かった。一方IRI 7日後においては脾摘群との有意差は認めなかった。IRI 24時間の尿細管間質に明らかな細胞浸潤は認めなかった。考察として、今回の実験ではIRIにおいて脾臓はIL-10の主要産生臓器ではないことが示唆された。腎臓内IL-10の上昇は細胞浸潤を伴っていないことから、IRI急性期における腎臓内組織からのIL-10産生の可能性が考えられる。以上よりIRIにおいてIL-10は腎局所的に誘導されることが判明した。
3: やや遅れている
予想していた結果とやや違った結果となっているため、再現性を確認するために時間を要したことが理由として挙げられる。特にIRIによってIL-10産生のbregが脾臓においてその発現が増強していた。しかしながら、IRIを施した腎臓におけるIL-10産生細胞は、脾臓が今回IL-10産生の主座ではなかった。以上より腎臓局所でIL-10を産生しうる可能性について考えられる。
IL-10産生Bregが腎臓においてどのような役割を担っているのか、保護的作用を有するかについて解明する必要がある。そのために今後IL-10産生BregのIRIモデルに対する直接的導入を検討していく予定である。潰瘍性大腸炎モデルの腸管では、IL-10産生Bregが大量に集積・存在しているとの報告がある。以上から、潰瘍性大腸炎マウスモデルにおいて腸管からBregを抽出し、IRIを施した腎臓に直接導入することによりBregが腎臓のどの部分に生着し、IL-10誘導性に腎保護に働く可能性について検討することで、IRIによる腎傷害が軽減される可能性について検討を行う予定である。細胞注入については、免疫抑制薬の使用などが必要となる可能性もあるが、さらにその投与方法を皮膜下、もしくは動脈内投与にするか、現在その方法について更なる検討を行なっているところである。腎機能の改善が認められれば、組織の改善効果の検証、修復に働く蛋白質の同定を行なっていきたい。結果次第では、新たなAKIに対する治療として今後臨床応用へ向け研究を継続していく所存である。
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