研究課題/領域番号 |
19K08694
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
小松田 敦 秋田大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (70272044)
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研究分担者 |
堂前 直 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, ユニットリーダー (00321787)
涌井 秀樹 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (70240463)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 膜性腎症 / PLA2R陽性 / PLA2R陰性 / Bucillamine腎症 / 質量分析 |
研究実績の概要 |
PLA2R陽性の8症例(PLA2R(+)MN)、PLA2R陰性の10症例(PLA2R(-)MN)、二次性膜性腎症であるBucillamine腎症(Bucillamine-MN)の10症例、および対象コントロールになる移植ドナー腎の5例の腎生検標本から、マイクロダイセクションにより糸球体を採取し、質量分析を行い、機能別に各群で増減している蛋白質を比較検討し、それらを同定した。Immunoglobulins(Ig)では、PLA2R(+)MNに関与するIgG4が増加していて、Bucillamine-MNでの関与は乏しいかった。IgG4がPLA2R(+)MNで重要なIgであることが確認された。Complements系では、MN全体に補体の高値が認められた。Complement-regulating proteinsは制御系を含めて、MN全体で高値であり、MNの進展に補体及び補体調整因子の関与が示唆された。Apolipoproteinsは全体的に高値をしめした。ネフローゼでの低蛋白血症を肝臓で代償する際に、脂質質合成も活性化され、糸球体にも沈着し、病態に関与することが示唆される。その他、plasma proteinsではAlbuminとα-1 antitrypsinが高値であった。ネフローゼでは尿中に増加し、糸球体濾過後の原尿での増加を見ている可能性がある。Podocyte proteinsは、増加が明らかな蛋白質は、保護的に働いているものと考えられた。膜性腎症の病変部位である基底膜の主要蛋白質は、ほぼ不変であった。その他、TM α-1、Calmodulin、DUSP14、HMG-1 (HMGB1)、など、一次性MNとBucillamine-MNで明らかに異なることが明らかになった。従って、糸球体内の蛋白質発現は各群で異なり、それらの病因や疾患の進展の相違に関連することが考えられた
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PLA2R(+)MN、PLA2R(+)MN、Bucillamine-MN群の間で変動の大きい蛋白質の抽出、および、機能別蛋白質群のリスト化が出来た。今後、これらの中から、蛋白質Xに対する抗体を入手できれば各種膜性腎症の腎生検標本を用いて免疫染色を施行し、その分布や特異性を検討可能である。特異抗体が入手困難であれば、リコンビナント蛋白質Xを発現・精製し、ウサギに免疫して特異抗体を得る予定である。各群のMN症例の腎生検組織を用い、抗蛋白質Ⅹ抗体による免疫染色を行い、蛋白質Ⅹの糸球体内染色性がMNの所見に合致するか確認し、これらの中に各群に特異的な疾患マーカー候補を見出していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、PLA2R(+)MN、PLA2R(+)MN、Bucillamine-MN群の間で変動の大きい蛋白質を選択し、蛋白質Xに対する抗体を入手できれば各種膜性腎症の腎生検標本を用いて免疫染色を施行し、その分布や特異性を検討する。特異抗体が入手困難であれば、リコンビナント蛋白質Xを発現・精製し、ウサギに免疫して特異抗体を得る。各群のMN症例の腎生検組織を用い、抗蛋白質Ⅹ抗体による免疫染色を行う。蛋白質Ⅹの糸球体内染色性が、MNの所見に合致するか確認する。これらの中に各群に特異的な疾患マーカー候補を見出していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:学会出張旅費の計上がなく、また、抽出された蛋白質に対する特異抗体Xの購入費が予定より過少であったためである。 使用計画:残額は248,258円で、令和3年度に新たに配分される金額は1,000,000円である。検討中の糸球体沈着蛋白質Xについて、免疫染色も追加して詳細に検討する。
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