研究実績の概要 |
腎臓の糸球体上皮細胞であるポドサイトの傷害は慢性腎不全を惹き起こす主要な原因の一つと考えられている。ポドサイトがどのように傷害をもたらすストレスを感知し、対応しているかは明らかではない。細胞が侵害刺激を感知する陽イオンチャネルの多くは、Transient Receptor Potential (TRP)スーパーファミリーに属する。この中で、Trpv1, Trpv2, Trpv3, Trpvm6を様々な組織での発現量を調べたところ、TRPV2が糸球体に特異的に高発現していることを見出した。ポドサイト初代培養細胞を用いた遺伝子発現、腎組織を用いた免疫染色で検討したところ、糸球体の中でもポドサイト、特にポドサイトの足突起に局在することを見出した。 TRPV2の生理的役割、慢性腎不全での役割を明らかにするために、培養ポドサイトでの検討とノックアウトマウスの作成を行った。その結果、培養細胞では、分化形質を培養でより良く安定して再現するための培養条件の検討を行い、TRPチャネルを介して細胞が反応しうるかどうかをみるために、TRPV1-3を活性化するジフェニルボリン酸2-アミノエチルと低浸透圧刺激で細胞内Caイオンの濃度変化を調べた。その結果、有意な細胞内Caイオンの濃度変化を認め、TRPV2が関わっている可能性が示された。ノックアウトの作成では、loxPを挿入したTRPV2の遺伝子改変マウスの精子を得て、体外受精を行い、ポドサイト特異的に発現するNphs2-CreERT2と掛け合わせ、双方の遺伝子を持つマウスを得た。しかしながら、単離糸球体でのCrericombinaseの発現量が十分ではなく、ポドサイトのTRPV2の有意な発現量の低下を認めることができなかった。
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