研究課題/領域番号 |
19K08699
|
研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
古市 賢吾 金沢医科大学, 医学部, 教授 (50432125)
|
研究分担者 |
和田 隆志 金沢大学, 医学系, 教授 (40334784)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 急性腎障害 / CAGE解析 / 修復 / 特異的iPS細胞 |
研究実績の概要 |
急性腎障害(acute kidney injury; AKI)は、慢性腎臓病の原因としても重要である。本研究は、急性腎障害の慢性障害への移行を阻止することを目標に、修復機序の解明を目指した研究である。本研究の発想は、“修復は発生を模倣する”という考えをもとにしたものであり、腎障害の修復過程と発生過程を比較しながら、研究を進めている。急性腎障害モデルマウスおよび疾患特異的iPS細胞による腎系譜細胞誘導および胎仔マウス解析を行っている。 本年度は、初年度に行った疾患特異的iPS細胞から腎系譜細胞への誘導によるサンプル収集を終了させた。CAGE解析による発現遺伝子の基本的な網羅解析もほぼ終了しており、個別の分子に対して追加の解析を行っている。また、転写因子PAX2を標的としたChip-Seq解析では、収量の問題が生じていたが、現状で可能な範囲での解析を進め、一定の結果を得た。くわえて、マウス胎仔腎のオープンデータベースを用いた解析も基本的な解析を終了した。 また、動物実験では、マウス虚血再還流モデルを施行し、腎組織およびRNAサンプルの収集を行った。疾患特異的iPS細胞を用いた腎系譜細胞への誘導およびマウス胎仔腎のオープンデータベースを用いた解析解析から抽出された候補分子に対して、発現遺伝子解析の検討を進めた。今後は、さらに分子を広げての検討と共に、有望な標的分子に関しては、局在の検討も進める予定である。 このように、当該年度は当初予定していた計画を順調に施行できた。疾患特異的iPS細胞からのCAGE解析などは、基本的な解析を終了した。最終年度は、論文化も含めて進める予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、初年度に疾患特異的iPS細胞から腎系譜細胞への誘導を行い、収集したサンプルを、1塩基レベルで転写活性を評価できるCAGE(Cap Analysis of Gene Expression)法を用いてデータ収集を進めた。得られたデータのドライ解析も順調に進めており、疾患特異的iPS細胞と正常iPS細胞における発現遺伝子から、候補遺伝子のリストを作成することができた。マウス胎仔腎のオープンデータベースを用いた解析も同時並行して進めており、候補遺伝子のリストを作成できた。両検討で共に上位に上がる因子が重要と考え、それらを腎修復に関する候補分子としてマウス虚血再還流モデルの実験に供した。また、これまでの網羅的解析にくわえ、既報の情報も加味しながら、個別の分子に対しての探索的な検討も進めている。近年報告の多い、シングルセル解析などの既存のオープンデータベースの情報も用いて検討を開始した。 動物実験では、マウス虚血再還流モデルを施行して検討を進めてきた。すでに基本的な時系列サンプルに関しては、順調にサンプル収集が進み、発現遺伝子の解析を行っている。上記発生に関する検討から得られた候補分子を既報の分子情報等も考慮しながら、標的分子を定めて順にreal time PCRで検討を進めている。既に、腎修復のタイミングで発現上昇が確認出来た分子を複数同定出来た。異なる動物モデルでの検討も平行して行っており、それらを比較しながら修復に関する標的遺伝子の絞り込みを進めて行く。今後は、これらの分子の局在同定を進める。 以上、本年度は発生に関する基本的な網羅解析を終了させると共に、修復に関する検討も進める事が出来、当初予定していた計画を概ね順調に進める事ができた。
|
今後の研究の推進方策 |
疾患特異的iPS細胞から腎系譜細胞への誘導を行い、解析に関しては、基本の網羅的解析は終了した。個別分子に対する情報をもとに、追加の解析を進める予定である。 同様に、マウス胎仔腎のオープンデータベースを用いた解析も基本の解析が終了しており、個別分子に対する情報をもとに、追加の解析を進める予定である。 マウス虚血再還流モデルでの検証は、引き続き行う。分子の発現局所の解析を行うと共に、機能解析の可能性についても検討を進める。 最終年度である次年度中に、予定の計画を進められるように研究を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予定通りの使用となったが、若干の残額が生じた。次年度、消耗品の購入に充てるなどして有効に利用して、執行予定である。
|