研究課題/領域番号 |
19K08702
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
荒木 信一 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (80378455)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 糖尿病性腎症 |
研究実績の概要 |
糖尿病患者の生命予後を改善させるためには、糖尿病性腎臓病を含む糖尿病性血管合併症の発症・進展阻止は重要な医療課題である。近年、糖尿病患者の高齢化と糖尿病治療成績の向上に伴いアルブミン尿の程度に関係なく腎機能が低下している患者が増加していることが新たな課題となっている。そのため、腎機能低下あるいは心血管イベントを予測できる鋭敏な新規バイオマーカーの探索が急務である。 本研究課題は、研究代表者らのこれまでの基礎・臨床研究から得られた知見に基づき、細胞内エネルギー代謝維持に不可欠なNAD+代謝経路に着目し、NAD+とNicotinamide mononucleotide (MNN)の尿中排泄量が、腎機能低下あるいは血管合併症の新規バイオマーカーとなる可能性を検証することを目的とする。 これまでに、少数例によるサンプル測定を繰り返し実施し、多数検体を測定するための問題点を検証し・修正を行ってきた。これまでに滋賀医科大学で実施している長期前向き経過観察研究で長期保存されている日本人2型糖尿病患者50名の保存尿サンプルを用いてNAD+、NADH、NMN、1-MNA (1-Methylnicotinamide)の4種類のNAD+代謝関連分子の尿中排泄量をHPLC-MS/MS法により定量測定を実施してきた。その結果、尿中NADH排泄量(尿中クレアチニン濃度補正)が、観察開始時(測定時)のHbA1c値と正相関(r=0.416, P=0.013)を示し、その後の年間平均腎機能低下速度と負の相関関係(r=-0.361, P=0.033)にあることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまでに少数例のサンプル測定を繰り返し実施してきたが、多数検体を測定するためには、現在の方法では、測定感度、精度にやや問題があることもわかってきたため、測定方法をさらに向上させていく必要があり、当初の計画より遅れが生じてしまった。また、尿中NAD+代謝関連分子濃度をHPLC-MS/MS法にて測定を試みているが、1サンプルの測定が非常に高額であるため、可能な限り、多数検体をまとめて測定する方が1サンプル当たりの費用を抑えることができるため、次年度に多数検体による測定を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度である次年度には、滋賀糖尿病血管合併症前向き経過観察研究で長期保存されている尿サンプルを用いて、観察開始時の尿中NAD+代謝関連分子濃度測定を実施し、その結果を基に、断面研究による腎機能との相関関係の探索、前向き観察研究で蓄積されているデータベースを利用して、平均12年間の追跡期間にける腎機能低下(年間平均腎機能低下率)との関連性を多変量重回帰分析で検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題では、滋賀糖尿病血管合併症前向き経過観察研究で長期保存されている2型糖尿病患者の保存尿サンプルを用いて、HPLC-MS/MS法により尿中NAD+代謝関連分子濃度を測定することを予定している。しかしながら、HPLC-MS/MS法による測定は非常に高額であるため、可能な限り、多数検体でまとめて測定することが1サンプル当たりの測定費用を低く抑えることができる。また、測定方法のさらなる感度・精度も向上を目指しているが、その問題点の修正に時間を要してしまったために、本年度は多数検体による測定を実施せず、最終年度である次年度に、多数検体の測定を実施していく計画に変更した。
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