現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単一の腸幹細胞から腸オルガノイドが再生される過程において、一過性のYAP1活性化によって惹起されるNOTCHシグナルが重要であることが知られている(Serra D., 2019)。そこで、GSK3b阻害によってWnt/b-cateninシグナルを活性化する化合物であるCHIR99021の代わりにAfamin/Wnt3a conditioned mediumを用いたところ、YAP/TAZが活性化され、tip細胞コロニーから尿管芽オルガノイドの再生が可能となることが分かった。したがって、尿管芽オルガノイドから機械的に切離することなく、選択的に誘導し、拡大培養したtip細胞から尿管芽オルガノイドを再生する独自の培養法を開発することに成功した(Mae S., 2020)。 誘導された尿管芽tip細胞は、その特徴である幹細胞としての性質を保ったままin vitroで長期間の維持培養を行うことにより、安定かつ大量に分枝する尿管芽オルガノイドを作製できるため、マウスなどの初代尿管芽組織に代わり、腎臓発生生物学を研究するための有用なツールとなることが期待される。これまでに、TGFbetaシグナルは尿管芽分枝を抑制することが報告されており(Bush KT., 2004)、我々が誘導したiPS細胞由来尿管芽tip細胞はTGFbeta2を発現していた。そこで、TGFbetaシグナル阻害剤を用いて尿管芽tip細胞を培養したところ、70日以上もの長期間に渡り、尿管芽tip細胞マーカーであるRETおよびGATA3発現が維持され、尿管芽オルガノイドを再生する性質も保たれたまま拡大培養できることが分かった(論文未発表)。
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