研究実績の概要 |
古くから慢性腎臓病において血中のホモシステインの濃度が上昇することが知られ動脈硬化促進の原因のひとつとして考えられてきた。ホモシステインの尿中排泄低下や腎臓での産生亢進が慢性腎臓病における高ホモシステイン血症の原因と想定されているが詳細な機序は不明である(総説 JASN 2001)。ニコチンアミド-N-メチル基転移酵素(NNMT: Nicotinamide N-methyltransferase)はメチオニン代謝とNAD代謝を触媒する酵素であり、NNMTは肝臓、腎臓において強く発現しておりin vivoにおけるNNMTの関与は未だ明らかではなかった。NNMT過剰発現マウス、NNMT欠損マウスにてホモシステインの動態に対して検討を行ったが、予想に反してNNMT欠損マウスでもホモシステインの産生が認められた。NNMTはホモシステインとともにNAD代謝にも影響を与える。NNMTの慢性腎臓病における動脈硬化進展する意義を検討するため、まずNNMT欠損マウスでNAD代謝の検討を行った。NNMT欠損マウスでは血中のnicotinamide(NAM)が有意に増加していた。 NAMは肝臓、腎臓で産生され血中からの運搬を介して各組織のNAD産生の基質となることが報告されているため(cell metabolism 2018),アデニン誘発慢性腎不全モデルを作成しNAD代謝を検討した。このモデルマウスでは血管の石灰化から中膜肥厚等の動脈硬化をきたすことが報告されている(J Hypertens, 2013 Jan;31(1):160-8).sham群では野生型、NNMT欠損マウスでは有意な変化は認められなかったものの血中のNAMおよびNNO値がNNMT欠損マウスで有意に増加しており、NNMTの欠損によって2PY、4PYへの代謝が阻害されていることが明らかとなった。また心血管系への影響を検討したが、心重量、動脈壁に関してNNMT欠損と野生型に変化は認められなかった。
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