研究課題
Villin-CreマウスとMR-floxマウスの交配により得られた腸管MR欠損マウス(腸管MRKO)を用いて、5週齢より高脂肪食(HFD)負荷を行い、申請時よりサンプル数を増やして解析を行った。Controlマウス(Control)および腸管MRKOともに、体重の増加を認めたが、HFD負荷開始後20~25週において、腸管MRKOにおける体重抑制が認められた。血圧においても、腸管MRKOで抑制傾向が認められたが、有意差は認めなかった。便中Na排泄は、腸管MRKOにおいて有意に高値であり、代償的に、腸管MRKOでは尿中Na排泄の低下が認められた。主たるアウトカム指標であるアルブミン尿は、HFD負荷週数が進むにつれ、増加を認め、腸管MRKOではアルブミン尿の抑制傾向がみられたが、controlとの群間に有意差は認めなかった。血中レニンおよびアルドステロン値には、群間で差を認めなかった。6時間空腹後の血糖の評価も行ったところ、腸管MRKOで低値傾向を示したが、群間で有意な差は認めなかった。HFD負荷で、両群間に体重の差が認められたため、続いて、カロリー制限食(CR)負荷を行った。CR負荷後4週において、Control および腸管MRKOともに体重減少が認められたが、両群間で有意差は認めなかった。腸管におけるMRの発現は、大腸のみならず、小腸にも広く発現を認める。これまでの検討から、Na吸収を担う上皮性Naチャネル(ENaC)の発現が、腸管MRKOにおいては有意に抑制されており、そのことがNa吸収および血圧調節に強く関与していることを明らかにしているが、小腸においては、ENaCβおよびENaCγは低発現であり、小腸MRは別の機能を担っている可能性が示唆される。現在、小腸および大腸における遺伝子の発現比較を、マイクロアレイ解析を用いて行っている。
2: おおむね順調に進展している
申請時に得られていた結果が、サンプルサイズを増やしたことで変わってしまった面もあったが、糖尿病性腎症の病態における腸管MRの意義を明らかにするという方向性では、核心に一歩近づけたと考えている。
我々は、これまでの検討から、大腸MRがENaCの発現調節を介して腸管からのNa吸収に関与し、そのことが高血圧性病態形成に影響をもたらす可能性を明らかにしていたため、2019年度は、血圧の推移を中心に、糖尿病性腎症の病態形成(アルブミン尿など)への影響を検討してきたが、高脂肪食負荷下では、腸管MRKOモデルで若干の病態緩和がみられるものの、顕著な差ではなかった。一方、MRは、小腸にも高発現を認めるものの、小腸はENaCを介した機能とは異なる機能を有していることが予想され、また腸管MRKOでは血糖がやや低値傾向を示していたこともあり、2020年度は、腸管MRの血糖調節機能に注目して研究を進めて行く予定である。
飼料や試薬等を一括購入するなど、支出の削減に努めたため。未使用金については、サンプルサイズの拡張に伴う、飼料代を含めた飼育関連費や生化学的検査費用の増加分にあてるほか、ChIPアッセイなどの新たに計画したアッセイの費用にあてる予定。
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