研究課題/領域番号 |
19K08715
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
湯澤 由紀夫 藤田医科大学, 医学部, 教授 (00191479)
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研究分担者 |
長尾 静子 藤田医科大学, 疾患モデル教育研究サポートセンター, 教授 (20183527)
倉橋 浩樹 藤田医科大学, 総合医科学研究所, 教授 (30243215)
坪井 直毅 藤田医科大学, 医学部, 准教授 (50566958)
鍋島 俊隆 藤田医科大学, 保健学研究科, 客員教授 (70076751)
齋藤 邦明 藤田医科大学, 保健学研究科, 教授 (80262765)
高橋 和男 藤田医科大学, 医学部, 教授 (90631391)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 糖尿病性腎症 / 糖尿病性腎臓病 / トリプトファン / キヌレニン / メタボローム解析 |
研究実績の概要 |
2型糖尿病では体内のエネルギー代謝に関する臓器間ネットワークの異常が生じており,その合併症は,代謝変容,臓器由来の液性因子の増加,慢性炎症の継続により進展することが明らかとなってきた。我々は,糖尿病性腎症の発症・進展に関与する複雑な多臓器連関を全体として捉えるアプローチとして,メタボローム解析を行ない,トリプトファン(TRP)代謝経路が糖尿病性腎症の発症進展に関わることを見出した。必須アミノ酸の一つであるTRPは腸から吸収され,腸内細菌叢の影響をうける。TRP代謝物は体内の重要な生理活性物質であり,生理反応や様々な病態により局所のTRP代謝酵素が誘導され,その代謝物が他臓器に影響する臓器連関をおこす。そのため精神疾患や糖尿病をはじめ多くの疾患と関連し,治療ターゲットとして注目されてきたが,糖尿病性腎症発症・進展への役割は明らかでない。TRPは主にキヌレニン(KYN)経路で代謝され,律速酵素であるIndoleamine 2,3- Dioxygenase 1 (IDO1)は炎症性サイトカインやストレス,ホルモンにより誘導される。疾患によりこのTRP・KYN代謝物バランスが変容するため,病態予測への応用が期待される。我々は,組織診断された糖尿病性腎症患者の血液中TRP代謝物プロファイリングを行ったところ,代謝物群の変容が確認され,一部の血中代謝物量が蛋白尿,腎病理所見の間質細胞浸潤,全節性硬化と相関した。そこで,2型糖尿病モデル動物(SDT fatty rat)を用いて,腎症進行に伴う血液・尿・腎組織中のTRP代謝物の変化を観察したところ,ヒト同様にTRP代謝変容を認めた。さらに一部代謝物は腎症進展に従い増加を認めた。糖尿病性腎症におけるTRP代謝経路の役割を明らかにすることで,多臓器連関をターゲットにした診断・治療介入が可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
糖尿病性腎症モデル動物を作成し、腎症に蓄積するトリプトファン代謝物を同定した。その代謝物の毒性を確認後、代謝物を対象とした薬剤の投与実験を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
糖尿病性腎症モデル動物を作成し、腎症に蓄積するトリプトファン代謝物を同定した。その代謝物の毒性を確認後、代謝物を対象とした薬剤の投与実験により、腎症改善効果の有無を確認する。さらに、同定したトリプトファン代謝物を異なるステージの糖尿病性腎症患者血清、尿で測定しその臨床的意義を検討する。
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