糖尿病の重篤な合併症のひとつである糖尿病性腎臓病は進行するまで自覚症状を伴わないことが多い。そこで本研究では糖尿病性腎臓病(DKD)の予後予測法の開発、あるいは早期診断法の開発を目指すことを目的に、申請者らが先行研究(Diabetes Res Clin Pract. 2019;147:37-46)にて見出したDKD関連タンパク質の尿中濃度とDKDの進行度との関連を検討した。 尿中タンパク質濃度の測定はmultiple reaction monitoring法にて行い、afaminタンパク質を含む75タンパク質由来105種のユニークペプチドを測定対象とした。また、解析対象者は登録時eGFR≧60 (ml/min/1.73 m^2)であった2型糖尿病患者486名のコホート集団のうち、平均追跡期間5.4±2.1年 (mean±s.d.)の間に研究参加登録時のeGFRに対してeGFR年平均低下率が5%以上であった44症例(eGFR低下群)、およびeGFR年平均低下率5%未満であった174症例(対照群)とした。対象者より参加登録時に採取した随時尿を用いてタンパク質濃度測定を行った結果、対照群に比べてeGFR低下群で有意に濃度変動するタンパク質11種を同定した。なお、尿中afamin濃度はeGFR低下群で上昇する傾向を認めたものの有意水準には至らなかった。 さらにeGFR低下群で有意に濃度変動するタンパク質の尿中濃度を用いてeGFR低下群の判別能をROC解析にて評価した。eGFR低下に寄与する有意な因子として抽出された4種の尿中タンパク質濃度を用いたROC曲線下面積は登録時臨床情報を用いたROC曲線下面積を上回っていた。本解析にて同定した尿中タンパク質はeGFR低下に先立ち濃度変動していたことから、腎機能低下を予見するマーカーとなる可能性がある。
|