研究実績の概要 |
【方法】1.胎内栄養環境マウスモデル:C57BL/6J 雌マウスを妊娠中、①通常食(Control Diet: CD)、②高脂肪食(High Fat Diet: HFD 60% Lipid)で飼育した。2.大型放射光施設SPring-8にて、胎仔マウスの位相差CT撮影を行い、3次元化ソフトウウェアAmiraを用い、腎体積とMurrayの法則により腎血流量の定量的評価を行った。 【結果】1. HFD群ではCD群に比較し、胎生期には両側腎臓体積の有意な増加を認めた(mean±SD, 0.91±0.09 vs. 1.31±0.10 mm3, CD vs. HFD, p=0.0002)。2.両群間で腎動脈直径に有意差を認めなかった(mean±SD, 125.9±60.49 vs. 178.4±97.38 nm, CD vs. HFD, p=0.52)。3. 両群間で腎体積当たり血流量に有意差を認めなかった(mean±SD, 0.79±0.93 vs. 1.93±2.15, CD vs. HFD, p=0.52)。4. 胎生14.5日腎組織では、HFD群においてHIF-1αの発現が増強していた。5.15週齢マウスにおいて、両群間でアルブミン尿に有意差を認めなかったが (2.74±2.24 vs. 3.11±1.48 μg/day, CD vs. HFD p=0.42)、血清クレアチニンはHFD群で低下していた(0.13±0.01 vs. 0.09±0.02 mg/dL, p=0.0002)。6. HFD群では、4週齢時、尿細管細胞内空胞形成、15週齢時、腎糸球体硬化、腎内動脈硬化病変を認め、更には、傍腎ベージュ細胞の白色脂肪化を合併していた。 【結論】胎生期過栄養は、胎生期腎臓における相対的低酸素状態を惹起し、その病態は成体期まで継続し、腎病変形成に至る可能性が示唆された。
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