研究課題/領域番号 |
19K08720
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
張 エイ 新潟大学, 医歯学系, 助教 (00529472)
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研究分担者 |
河内 裕 新潟大学, 医歯学系, 教授 (60242400)
福住 好恭 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (20609242)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ポドサイト / 蛋白尿発症 / Ca2+活性化型陽イオンチャネル / TRPM4 |
研究実績の概要 |
TRPM4は、チャネル機能を持つTRPM4b 、チャネル機能を持たないTRPM4aなど各種分子型の発現があることが報告されているが、各臓器、組織における各分子型の発現は十分に検討されていない。ポドサイト特異的KOマウスの確立に先立ち、初年度はポドサイトにおけるTRPM4の発現分子型の検討を行った。糸球体材料を用いた検討で、exon 4単独欠損の新しいvariantが存在し、ポドサイトでは他組織に比べ、同variant並びにTRPM4aの発現が多いことを明らかにした。また、TRPM4チャネル阻害剤である9-Phenanthnol処理によりexon 4単独欠損variantの発現が低下することを観察した。ネフローゼ症候群モデルでは、TRPM4b 、TRPM4aの発現の低下を観察したが、exon 4単独欠損variantの発現に変化はなかった。一方ですべてのvariantsに共通する部分を認識するprimer pairでの検討では、発現の低下が見られた。これらの観察結果は、ポドサイトには別の新たなvariantが存在することを示唆していると考えられた。 ポドサイトにおけるTRPM4の局在、発生期、病態における発現動態の検討を行なった。二重免疫蛍光法、Duolink in situ assay法での検討で、TRPM4は主にnephrin近傍のスリット膜並びにそのやや頂部に主に発現していることを明らかにした。発生期糸球体ではTRPM4はS字管期初期に既に発現しており、S字管期後期nephrin発現と同時にその近傍に発現することを観察した。ネフローゼ症候群モデルでの検討で、蛋白尿発症時スリット膜部TRPM4の発現が変化し、頂部にシフトすることを観察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TRPM4の分子型の検討を行った。既報でTRPM4の2つのVariants(全長のTRPM4bと、Exon 3と4のDouble欠損のTRPM4a)の存在が報告されていたが、本研究でTRPM4の新しいvariantの存在を発見した。このvariantは糸球体において他組織に比べ発現量が多いこと、TRPM4チャネル機能阻害薬である9-Phenanthnol処理により同variantの発現が低下することを明らかにした。また、ネフローゼ症候群モデルラットの蛋白尿ピーク時に、TRPM4の発現と局在が明確に変化していることを明らかにした。 研究計画調書の検討1として記述したポドサイト特異的KOマウスの確立に先立ち、初年度はポドサイトにおけるTRPM4の発現分子型の検討を行い新たなvariantを発見するという成果を得ることができた。また研究計画調書で検討3として記述した病態モデルでのTRPM4の発現動態の検討、9-Phenanthnolによる修飾効果についての検討で新たな知見を得ることができた。以上より、本研究はおおむね順調に進展していると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の検討で発見した新しいTRPM4 variantの機能解析を進める。また、ネフローゼ症候群モデルでの検討で存在が示唆された新たなvariantの解析を進める。今年度は、variant解析と同時に、ポドサイト特異的TRPM KOマウスの確立、その表現型の解析を進める。具体的には、①ポドサイトの足突起、糸球体基底膜の形態変化の有無、ポドサイト機能分子、糸球体基底膜構成分子、内皮細胞関連分子の発現、局在変化の有無を検討する。②KO誘導後長期に観察し、病的蛋白尿発症の有無、発症時期の検討を行う。蛋白尿の発症が確認されなかった場合は、片腎摘出による腎に対する機能負荷、大量アルブミン投与によるポドサイト負荷、PANなど各種ネフローゼ誘導薬剤負荷などに対する脆弱性を検討する。 今年度、並びに第3年度以降の検討として、TRPM4とTRPC6の相互作用の検討を行う。TRPM4 KOマウス糸球体におけるTRPC6の発現動態をリアルタイムPCR、免疫蛍光染色法などで検討する。また、培養ポドサイトを用いてsiRNAによるTRPC6発現抑制時、TRPM4によるCa2+流入抑制がどのように変化するか、またTRPM4のチャネル機能の特異的阻害薬である9-Phenanthnolの添加時、TRPC6を介したCa2+流入がどのように変化するかなどについての検討を行い、ポドサイト機能維持におけるTRPM4の役割を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
分子型検討のための消耗品経費は予定より多く必要となったが、遺伝子改変マウス作製、維持に関わる経費が予定より少なかったため、次年度使用に回すことができた。この部分の研究費は、次年度の遺伝子改変マウスの確立、維持費用に使用する予定である。
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備考 |
新潟大学腎研究センター腎分子病態学分野 https://www.med.niigata-u.ac.jp/npa/basic/#cellBiology
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