研究課題
急性腎障害(acute kidney injury : AKI)から急性肺障害(acute lung injury : ALI)のリモート作用に腎臓から脳への神経経路(求心路)の役割は少ないこと、脳から肺への遠心路においては、脳から脾臓への神経経路がALIへの軽減効果に関与していることをこれまで明らかにしてきた。2021年度は、脾臓を介さず脳から肺マクロファージに直接的に作用する経路の関与を明らかにするために、clodronateの気管内投与によって肺胞マクロファージを除去して、アセチルコリンアゴニストの効果を検証した。肺胞マクロファージを除去されたマウスにおいては、アセチルコリンアゴニストによるAKI誘発ALIの軽減効果は保たれた。これは、脾臓摘出や脾臓マクロファージ除去によってアセチルコリンアゴニストによるAKI誘発ALIの軽減効果が消去された前年度の結果と対照的となった。また、IL-6が肺臓内皮細胞に作用して血管透過性を亢進し肺障害をきたす因子であることが知られている。AKIによって血中IL-6値は上昇し、アセチルコリンアゴニスト投与によってAKI後の血中IL-6は低下した。脾臓摘出されたマウスではアセチルコリンアゴニストによるAKI後の血中IL-6値低下効果は消失した。以上より、AKIからALIへのリモート作用を拮抗する経路には、脳から脾臓への自律神経を介したマクロファージの活性化による抗炎症作用が重要な役割を担っていることが考えられた。アセチルコリンアゴニストはAKIによるALIを脾臓マクロファージを介して軽減することを明らかにした。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Am J Physiol Renal Physiol
巻: 332 ページ: F540-552
10.1152/ajprenal.00334.2021