研究実績の概要 |
深層学習 (deep learning) に代表される人工知能 (artificial intelligence (AI)) の進歩はあらゆる分野において革新的な変化をもたらしつつある。Deep learningが過去にブームを引き起こしたAI技術と根本的に異なる点は、データに含まれる特徴量、すなわち問題解決に必要な本質的変数であったり概念を特徴づける変数を「機械が自律的に抽出」する点にあり、ヒトの頭脳では気づき得なかった「問題解決に必要な本質的特徴量を機械が我々人間に提示する可能性」を秘めている所にある。我々は、本研究においてAIを用いたヒト腎生検画像診断システムを構築した。ヒト腎生検画像診断システムの開発においては大量の教師データが必要であるため、全国24施設から約5,000例(HE, PAS, PAM, EMTの4染色で合計約20,000枚)の腎生検バーチャルスライド画像を集め、臨床データと紐づけたデータベースを構築した。バーチャルスライド画像は非常に巨大なデータであるため、同画像を小さなパッチ画像に分割し、うち約26万枚を56クラスにアノテーション付けし、EfficientNetをファインチューニングした。その結果、菅外増殖性病変など一部に誤認識が認められたものの、概ね良好な予測モデルが構築できた。画像に明示的に含まれている情報のみならず、暗示的に含まれている情報抽出を試みるため、糸球体関連画像を抽出し、最終診断名を教師ラベルとしてEfficientNetをトレーニングしたところ、糖尿病性腎症と診断されていない画像から糖尿病の特徴を抽出する事などが可能になった。
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