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2019 年度 実施状況報告書

遺伝性腎疾患におけるスプライシング異常症発症機序の解明および新規治療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 19K08726
研究機関神戸大学

研究代表者

野津 寛大  神戸大学, 医学研究科, 特命教授 (70362796)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードsplicing / RNA sequence / 核酸医薬 / アンチセンス治療薬
研究実績の概要

私たちはすべての遺伝性腎疾患を対象とした網羅的遺伝子診断体制を確立し遺伝子研究を行っている。これまでの私たちの研究の結果、遺伝性腎疾患において、これまで病原性はないと判断され見過ごされていた遺伝子変異が実はスプライシング異常をきたし、それにより病気を発症する患者が少なからず存在することが明らかとなってきた。本研究においては、遺伝性腎疾患を対象とし、スプライシング異常による疾患発症メカニズムの全容の解明およびスプライシング制御による治療法の開発を行う。以下に具体的研究方法に関して列記する。次世代シークエンサーを用いた解析によりスプライシング異常が疑われる変異を同定した場合、1)末梢血白血球または患者尿中落下細胞のmRNAを抽出の上、RNAシークエンス法によりスプライシング異常の証明を行う。2)尿中落下細胞より作成した患者腎由来培養細胞および患者遺伝子配列を挿入し作成したminigeneに対し、スプライシング制御蛋白を強制発現またはsiRNAによる発現抑制を行い、スプライシングパターンの変化を観察することで、スプライシング異常の発症機序および関与する蛋白の解明を行う。3)同実験系を用い、アンチセンスオリゴヌクレオチドや化学化合物の投与を行い、そのスプライシング制御(異常スプライシングを正常パターンに戻す、またはエクソンスキッピングによりナンセンス変異などの重症型の変異をインフレーム変異へと置換する)による疾患軽症化を試みる。以上により、遺伝性腎疾患におけるスプライシング異常の関与の頻度を明らかとし、本研究により日本国内における遺伝性腎疾患における研究を飛躍的に向上させることを目的とする。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2019年度は以下の通り、研究を行い論文発表を行った。1)Alport症候群患者におけるsplicing異常が疑われる変異においてminigeneを作成し、実際にsplicing異常を来しているかの検証を行い、それらの変異の病原性の証明を行った(Horinouchi et al, Sci Rep, 2019)2)Pierson症候群で非典型的に軽症の臨床像を呈した患者において、RNAシークエンスによりイントロン内変異に伴うスプライシング異常を同定したが、同時に少量の正常のスプライシング産物も産生するため軽症化したという分子生物学的機序を証明した(Minamikawa et al, J Hum Genet, 2019)3)Dent病患者におけるCLCN5遺伝子のsplicing異常が疑われる変異においてminigeneを作成し、実際にsplicing異常を来しているかの検証を行い、それらの変異の病原性の証明を行った(Inoue et al, Clin Exp Nephrol, 2020)4)WT1遺伝子のスプライシング異常により発症するFrasier症候群において、アンチセンス治療薬を用いてスプライシングを制御することによる治療法の開発を行っている。4)Alport症候群のスプライシング異常例において、スプライシングを調節するU2蛋白に対するsiRNAによりスプライシング異常を起こさなくすることで治療ができる科の検討を行っている。

今後の研究の推進方策

私たちは、年間約500件の遺伝子診断を行っており、膨大な次世代シークエンサーによる解析データをすでに保有しているが、これまでの遺伝子解析において、スプライシングに影響を与えることが明らかな変異(AG-GTのスプライシングコンセンサス配列)以外のイントロン内変異を有する場合や、アミノ酸の変化を伴わない一塩基置換(いわゆるサイレント変異)は、変異解析ソフトが病原性無しと判断するため見過ごされてきた。しかし、私たちはそのような変異でもスプライシング異常をきたすことにより病原性を有する場合が多々あることをアルポート症候群、Pierson症候群、Dent病など代表的遺伝性腎疾患において次々と明らかにしてきた。さらに対象疾患を増やし、網羅的にスプライシング異常の証明を行い、その疾患への関与について明らかにする予定である。
国内および海外においては、いかなる遺伝性腎疾患においてもそのスプライシング異常に着目し研究を行っている施設は存在しない。私たちは、アルポート症候群においては、その発症機序の解明を行い、世界に先駆けて治療法の開発を進めており、大変注目されている。そのため、本研究はすべての遺伝性腎疾患を対象とすることで、日本国内における遺伝性腎疾患治療研究を飛躍的に向上させることが可能である。
また、Alport症候群において開発を進めているアンチセンス治療薬による治療法を現在Frasier症候群に対して開発中である。具体的には患者由来尿中落下細胞から樹立した培養細胞の確立および、マウスモデルを作成し、その治療効果の判定を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

2019年度の研究において、次世代シークエンサーのランニングコストの低下があり、余剰金が発生した。2020年以降それに合わせ、解析件数をさらに増やし、スプライシング異常に関する研究をさらに進める。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 5件)

  • [雑誌論文] Comprehensive genetic diagnosis of Japanese patients with severe proteinuria2020

    • 著者名/発表者名
      Nagano China、Yamamura Tomohiko、Horinouchi Tomoko、Aoto Yuya、Ishiko Shinya、Sakakibara Nana、Shima Yuko、Nakanishi Koichi、Nagase Hiroaki、Iijima Kazumoto、Nozu Kandai
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 10 ページ: 428-437

    • DOI

      10.1038/s41598-019-57149-5

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Molecular mechanisms determining severity in patients with Pierson syndrome2020

    • 著者名/発表者名
      Minamikawa Shogo、Miwa Saori、Inagaki Tetsuji、Nishiyama Kei、Kaito Hiroshi、Ninchoji Takeshi、Yamamura Tomohiko、Nagano China、Sakakibara Nana、Ishimori Shingo、Hara Shigeo、Yoshikawa Norishige、Hirano Daishi、Harada Ryoko、Hamada Riku、Matsunoshita Natsuki、Nagata Michio、Shima Yuko、Nozu Kandai
    • 雑誌名

      Journal of Human Genetics

      巻: 65 ページ: 355~362

    • DOI

      10.1038/s10038-019-0715-0

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Functional analysis of suspected splicing variants in CLCN5 gene in Dent disease 1.2020

    • 著者名/発表者名
      Inoue T, Nagano C, Matsuo M, Yamamura T, Sakakibara N, Horinouchi T, Shibagaki Y, Ichikawa D, Aoto Y, Ishiko S, Ishimori S, Rossanti R, Iijima K, Nozu K.
    • 雑誌名

      Clin Exp Nephrol

      巻: in press ページ: in press

    • DOI

      10.1007/s10157-020-01876-x

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Clinical and Genetic Characteristics in Patients With Gitelman Syndrome2019

    • 著者名/発表者名
      Fujimura Junya、Nozu Kandai、Yamamura Tomohiko、Minamikawa Shogo、Nakanishi Keita、Horinouchi Tomoko、Nagano China、Sakakibara Nana、Nakanishi Koichi、Shima Yuko、Miyako Kenichi、Nozu Yoshimi、Morisada Naoya、Nagase Hiroaki、Ninchoji Takeshi、Kaito Hiroshi、Iijima Kazumoto
    • 雑誌名

      Kidney International Reports

      巻: 4 ページ: 119~125

    • DOI

      10.1016/j.ekir.2018.09.015

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Determination of the pathogenicity of known COL4A5 intronic variants by in vitro splicing assay2019

    • 著者名/発表者名
      Horinouchi Tomoko、Nozu Kandai、Yamamura Tomohiko、Minamikawa Shogo、Nagano China、Sakakibara Nana、Nakanishi Koichi、Shima Yuko、Morisada Naoya、Ishiko Shinya、Aoto Yuya、Nagase Hiroaki、Takeda Hiroki、Rossanti Rini、Kaito Hiroshi、Matsuo Masafumi、Iijima Kazumoto
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 9 ページ: 12696

    • DOI

      10.1038/s41598-019-48990-9

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Comparison between conventional and comprehensive sequencing approaches for genetic diagnosis of Alport syndrome2019

    • 著者名/発表者名
      Yamamura Tomohiko、Nozu Kandai、Minamikawa Shogo、Horinouchi Tomoko、Sakakibara Nana、Nagano China、Aoto Yuya、Ishiko Shinya、Nakanishi Koichi、Shima Yuko、Nagase Hiroaki、Rossanti Rini、Ye Ming J.、Nozu Yoshimi、Ishimori Shingo、Morisada Naoya、Kaito Hiroshi、Iijima Kazumoto
    • 雑誌名

      Molecular Genetics & Genomic Medicine

      巻: 7 ページ: Epub

    • DOI

      10.1002/mgg3.883

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Inherited salt‐losing tubulopathy: an old condition but a new category of tubulopathy2019

    • 著者名/発表者名
      Nozu Kandai、Yamamura Tomohiko、Horinouchi Tomoko、Nagano China、Sakakibara Nana、Ishikura Kenji、Hamada Riku、Morisada Naoya、Iijima Kazumoto
    • 雑誌名

      Pediatrics International

      巻: 62 ページ: 428-437

    • DOI

      10.1111/ped.14089

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] これからの小児科学研究をどのように進めるか;活躍する先輩小児科physician-scientistからのメッセ-ジ2019

    • 著者名/発表者名
      野津寛大
    • 学会等名
      第122回日本小児科学会学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] 遺伝性腎疾患に対するプレシジョンメディスン アルポート症候群に対する遺伝子標的療法の開発2019

    • 著者名/発表者名
      野津寛大
    • 学会等名
      第54回日本小児腎臓病学会学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] ゲノムから見た腎臓病 症例から考える遺伝性尿細管疾患2019

    • 著者名/発表者名
      野津寛大
    • 学会等名
      第62回日本腎臓学会学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] Bartter syndrome2019

    • 著者名/発表者名
      Kandai Nozu
    • 学会等名
      International Pediartic Nephrology Association 2019
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 9.Genetics and development of exon-skipping therapy for Alport Syndrome.2019

    • 著者名/発表者名
      Kandai Nozu
    • 学会等名
      International Pediartic Nephrology Association 2019
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2021-01-27  

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