研究実績の概要 |
遺伝性腎疾患を対象とし、スプライシング異常による疾患発症メカニズムの全容の解明およびスプライシング制御による治療法の開発を行っている。2020年度は 以下の成果を得た。 1. Alport症候群における、COL4A5遺伝子において、1)エクソン最後の塩基の1塩基置換は、そのほとんどがミスセンス変異ではなく、スプライシング異常を来すことで病気を発症することを世界で初めて明らかにした。ミスセンス変異とスプライスサイト変異ではその重症度が大きく異なるため、臨床および遺伝カウンセリングにおいて非常に貴重な情報を得ることに成功し、世界に発信した(Aoto Y et al, Kidney Int Rep, 2021)。2)Alport症候群の発症におけるスプライシング異常の関与に関して総説を執筆し発表した(Yamamura T et al Front Med, 2022)。 2. Frasier症候群においてWT1遺伝子のイントロン9の+1から+6のすべての変異により発症することが知られていたが、そのスプライシングパターンの違いや重症度の違いは全く明らかとなっていなかった。今回分子生物学的および臨床的に重症度の違いを検討した。その結果、すべての変異でスプライシングパターンや臨床的重症度は全く等しいことを証明した(Tsuji Y et al, Kidney Int Rep, 2021)。 3. 常染色体劣性多発性嚢胞腎患者で、明らかに臨床的に軽症例においては、スプライシング異常により欠失した塩基数が3の倍数であるため軽症であったことを証明した(Ishiko S et al., Clin Exp Nephrol, 2022)。 以上のように、遺伝性腎疾患では臨床的解釈および発症機序の解明において、スプライシング異常の有無に関して検討することが非常に重要であることを証明した。
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