研究課題
高糖濃度条件下メサンギウム細胞培養上清(HG MC-sup)刺激がマクロファージの炎症の活性化を抑制する化合物を探索するため、創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム(BINDS)に応募、研究計画が承認され、東京大学創薬機構より提供を受けた既存薬ライブラリの化合物スクリーニングを開始していた。HG MC-exoによるNFkB-SEAP誘導の抑制率 40%以上が得られた化合物のうち、ステロイド系化合物や既知のNF-kB阻害薬を除いた399化合物を2次スクリーニングへと進めた。2次スクリーニングでは細胞毒性、濃度依存性を確認し、160化合物まで絞りこんだ。次に3次スクリーニングとして非特異的な炎症反応の阻害効果でないことを確認するためにLPSによる炎症反応刺激に対してエクソソーム刺激が1.5倍以上の阻害効果をもつ化合物を選択した。53の化合物をスクリーニングできた。更に4次スクリーニングとしてTHP-1細胞を用いてエクソソーム取り込み阻害効果を持つ化合物として30化合物が選択できた。30の化合物の中には4つのHSP(Heat shock protein)-90が含まれており、その中でエクソソーム取り込み阻害効果が最も強かった化合物に注目して、糖尿病性腎症モデルラットであるSTZラットにその化合物を投与して腎症進展の抑制効果について検討を開始した。
2: おおむね順調に進展している
2019年度はスクリーニングにより化合物を絞り込む予定であった。スクリーニングでは当初の予定よりスクリーニング実験を追加し、数を絞り込み、中から特徴的な化合物を抽出し、糖尿病性腎症モデルラットに投与を開始できた。ここまではおおむね予定通りに進んでいると考えられた。
2020年度は当初の予定通り、スクリーニングで選別された化合物を糖尿病性腎症モデルであるSTZラットに投与、腎症抑制効果について尿中albumin、腎組織像、炎症シグナルなどを評価する予定である。その後、2021年度にかけて腎症抑制効果を認めた化合物について、その作用機序を検証する。エクソソームの効果発現機序として、主に元細胞(今回はメサンギウム細胞)からの分泌、ターゲット(今回はマクロファージ)での捕捉、取り込み、その後の蛋白・RNAなどを介した形質発現などが想定される。今回のスクリーニングでは、メサンギウム細胞からの分泌抑制を除いた残り3つのステップのいずれかへの作用が考えられる。In vitroにおいて、化合物がどの経路に作用しているのかを明らかにし、化合物投与したラットサンプルでの検証を行う。
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