研究課題
昨年度、東京大学創薬機構より提供を受けた既存薬ライブラリの中からスクリーニングにより得られた30の化合物の中には4つのHSP(Heat shock protein)-90が含まれており、その中でエクソソーム取り込み阻害効果が最も強かった化合物に注目して、糖尿病性腎症モデルラットであるストレプトゾシン(STZ)ラットにそのHSP-90阻害薬を投与して腎症進展の抑制効果について検討した。16時間の絶食の後、STZ 50mg/kgの尾静脈から単回投与によりSTZ誘発糖尿病ラットを作成した。STZ投与3週後に血糖値 500mg/dl以上の上昇を確認した後、 週2回、計6週間のHSP90阻害剤の投与を行い、腎症に対する効果を検討した。その結果、STZラットで認められる腎症進展の指標であるアルブミン尿の有意な抑制を認め、更に腎組織におけるメサンギウム領域の拡大を抑制する傾向を認めた。以上の結果より、HSP90阻害薬は糖尿病腎症の進行を抑制できる可能性が示唆された。前年度までの結果から、HSP90阻害薬はメサンギウム細胞由来液性因子中のエクソソーム取り込みを抑制していると考えられた。腎臓におけるエクソソームの関連マーカーであるCD9、CD63、CD81などを蛋白質やmRNAレベルで検出しようとしたが優位な結果は得られなかった。また、血液や尿に含まれるエクソソームを直接検出しようとしたがこちらも優位な結果は得られていない。様々な既報に照らし合わせながら、in vivoでエクソソーム取り込みに関して直接確認することを試みているが十分な検出感度には至っていない。
3: やや遅れている
糖尿病性腎症モデルラットに対する投与効果は示せたが、エクソソームの取り込みの部分の検討はできていない。今後の解析の途中であり、やや遅れていると考えられる。
2021年度はスクリーニングで選別された化合物を糖尿病性腎症モデルであるSTZラットに投与することで効果があることが分かったため、その効果を再度確認し、エクソソーム阻害作用の機序を検証する。In vitroにおいて、化合物がどの経路に作用しているのかを明らかにし、化合物投与したラットサンプルでの検証を行う。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件)
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