研究実績の概要 |
これまで我々は、Cisplatin (CP) 刺激後の培養尿細管上皮細胞 (TEC) で、マクロファージ (Mq)の 増殖因子Interleukin-34 (IL-34) とその受容体 c-FMS, PTP-ζがTECに発現し、抗IL-34抗体処置でTEC傷害が軽減したことを報告した。同様に、CP腎症によるin vivoでの検討でも、IL-34の中和抗体がMqの増殖とTECのアポトーシスを改善させたことを報告した。そこで2021年度は、片側尿管結紮 (UUO) モデルでIL-34の腎線維化への影響を検証した。 10週齢雄C57BL/6 (B6) マウス (n=16) にUUOを施し (Day 0)、治療群と未治療群に振り分け、UUO未施行のB6マウスを対照群とした (n=4)。治療は抗マウスIL-34抗体400 ng/kg、未治療群は同量の生食をDay 0から連日腹腔内投与し、Day 10に屠殺した。更に培養マウス近位尿細管上皮細胞 (MRPTEpiC)での検討も施行した。 UUOマウスでは、抗体投与群で有意に腎皮質内のIL-34とその受容体 (cFMSとPTP-ζ) のmRNA発現低下、腎の尿細管障害とsirus red陽性面積率の低下、腎のF4/80+細胞数の減少 、腎皮質のMCP-1/CCL2、MIP-1/CCL3、TNF-α、IL-6、TGF-β、COL-1、COL-3のmRNA発現低下 、腎のα-SMA蛋白発現の低下を認めた。TGF-刺激後のMRPTEpiCでは、IL-34と受容体の蛋白発現が亢進し、刺激24時間後のERK1/2リン酸化と48時間後のα-SMA蛋白発現の亢進が抗IL-34抗体処置で有意に抑制された。 中和抗体によるIL-34の阻害は上皮間葉転換を制御し、Mq浸潤とTGF-βや炎症サイトカインの発現を抑制して腎線維化を防止した可能性が考えられた。
|