研究実績の概要 |
本研究の目的は、胎盤のエネルギー産生においてプロレニン受容体【(P)RR】が果たす役割を明らかにすることである。これまで、母体血中のs(P)RRは妊娠中の血圧上昇および胎児の出生体重維持に関連し、母体には障害的に、胎児には保護的に働く可能性が示唆されていた。また、(P)RRは、網膜細胞において、ピルビン酸脱酸素反応および好気的代謝の維持に働くことが示されていた。そこで、我々は、胎盤栄養膜細胞において、妊娠高血圧症候群における胎盤虚血を模した低酸素刺激が、(P)RR、特に細胞内の可溶性プロレニン受容体【s(P)RR】を増加させ、増加した(P)RRがピルビン酸脱水素酵素(PDH)βサブユニット(PDHB)に結合することで、PDHBの分解を抑制して、好気的エネルギー産生を促進することを示した(Journal of Molecular Endocrinology 64:3,145-154, 2020)。低酸素による細胞内s(P)RRの増加とそれに伴うPDHBの機能維持は、エネルギー産生維持などによる胎児発育の維持と酸化ストレス増加などによる母体高血圧に関与している可能性がある。それらの関係について、in vivoも含めた解析を行った。子宮への灌流血管をクリッピングするReduced Uterine Perfusion Pressure (RUPP)法を用いたラットの実験においては、胎盤虚血での胎盤組織内s(P)RR増加が示唆され、興味深い所見と考えられた。
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