研究課題/領域番号 |
19K08738
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
金崎 啓造 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 教授 (60589919)
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研究分担者 |
飯島 洋 日本大学, 薬学部, 教授 (30465281)
高垣 雄太 金沢医科大学, 医学部, 助教 (50759123)
川北 恵美 金沢医科大学, 大学病院, 医員 (70835884)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | COMT / 塩分感受性高血圧 / エストロゲン / サイアザイド |
研究実績の概要 |
申請者は妊娠高血圧腎症の遺伝子改変モデル動物を世界で初めて報告し、catechol-o-methyltransferase(COMT)不全を介したカテコール代謝異常がその原因であることを解明した。妊娠高血圧腎症は人類特有の疾病であり、メタボリックシンドロームと病態における類似点が多岐にわたる。COMTはMg依存性の酵素であり、生体内カテコール代謝に中心的役割を演じる。COMT活性が異なる(高い、低い)2種類の系統の雄マウスを用いて、低マグネシウム高塩分食(LowMg-HS)を負荷して検討を行った結果、COMT活性がもともと低下しているDBA マウスではLowMg-HS環境下で高血圧を呈し、その分子機構としてCOMT活性低下に伴うカテコールエストロゲンの代謝不全が原因である可能性が示唆された。遺伝的にCOMT活性が高いBL6マウスではLowMg-HS環境下でも高血圧を呈さないが、COMT阻害薬を投与すると正常Mg濃度でもHSにて高血圧を呈しており、塩分感受性高血圧発症におけるCOMT不全の演じる病態的意義の重要性が示唆された。また、COMT不全で生じる塩分感受性高血圧はCOMTによるカテコールエストロゲン代謝産物である2-メトキシエストラジオール(2-ME)の投与にて改善した。その分子機構として、COMT不全マウスではサイアザイド利尿薬の標的であるNCCの活性が上昇することが確認され、実際NCCを抑制するサイアザイド利尿薬投与でCOMT不全に伴う血圧上昇は抑制された。上記内容をまずは確認・まとめて論文を投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まずは本プロジェクトにおける仮説、「遺伝的COMT不全を有するマウスにおいてMg欠乏との相互作用でCOMT不全関連症候群が生じる』は証明された。実際、サイアザイド利尿薬の標的であるNCCの活性上昇がCOMT不全で生じることに関しては予想外であったが、分子機構を鑑みると納得のいく結果である。予定よりも早く論文作成にこぎつけることができた。さらに現在、共同研究者との相互作用の結果、カテコールアミンの定量や、市販のメチルトランスフェラーぜ活性キットを応用して、COMT活性をモニターできるシステムも考案・応用できそうである。この様に、予想外の発展を得られた実験系も存在する。その一方で、研究代表者が金沢医科大学から島根大学医学部に途中で異動したこともあり、一時的に実験が中断してしまった分野があったが、2020年4月より研究チームメンバーも2名金沢医科大学より移動・増加したため、今後進展が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
現在は雄マウスを用いて実験を行なっているが、COMT不全と高血圧の関連に関して、申請者は世界に先駆けて妊娠高血圧腎症発症分子機構として報告したため、今後は雌マウス・卵巣摘出マウス、妊娠マウスなどを用いて解析を行う。すでにこの実験系は開始している。またMg不全が妊娠中に高血圧を惹起する可能性も予備的実験から明らかとなり、またその妊娠マウスから生まれた子孫マウスが高血圧を呈することもわかってきた。妊娠合併症とその後子孫の健康被害は大きな医学的問題であり、さらに進めて解析を行う。また、ヒトでCOMT不全を呈する単遺伝子多型を導入したトランスジェニックマウスが存在し、その解析も予定しているが、COMT活性など基礎的な解析を行った論文が存在せず、現在その研究は考慮中であり、現時点でのプライオリティーは低い。その他、代謝異常に関して耐糖能異常、脂質代謝異常なども解析を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が2019年7月より島根大学医学部教授として異動したため、その準備、また研究室の立ち上げなどに時間を要したために、数ヶ月研究費を使うことができなかった。2020年4月より、大学院生3名が所属することとなり、前年度に使いきれなかった研究費を効率的に用いて研究を行うことができる。
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