研究実績の概要 |
最終年度、マイクロアレイ解析結果をもとにバイオインフォマティクス解析を行った。その結果、糖尿病性腎臓病の糸球体結節病変のある症例において、予後の違いに関連する候補因子がCDH1, CD24, ESR1の3つに絞られてきた。さらに、最終年度においては、バイオインフォマティクス解析から得られた結果(発現量の差異に関するデータ)と腎組織内での実際のmRNAおよび蛋白の発現量に整合性が取れるかを、マイクロアレイ解析に用いた同一症例の残存腎生検検体を用いてqRT-PCRならびに腎組織免疫染色を行い確認した。その結果、qRT-PCRでは統計学的に有意に予後良好群でCD24, ESR1の発現が増強していたが、CDH1には発現差が見られなかった。さらに、免疫染色では、ESR1の発現量が統計学的に有意予後良好群で発現が増強していることも確認できた。 以上から、腎生検組織を用いたトランスクリプトーム解析により、ESR1が結節病変を有する糖尿病性腎症において腎保護因子の候補となる可能性が示されてきた。本研究で同定された因子は、過去に腎保護効果のある候補因子として報告されており、新規の保護因子候補を見つけた結果とはならなかったが、結節病変を有する糖尿病性腎臓病の進行を抑制する機能を有する可能性については本研究で初めて示されたことになる。これらの結果については現在、論文草稿段階であるが、本結果は第60回European Renal Association Congressの口頭発表に採択されており、今後結果の公表を査読あり英文誌に行っていく。
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