研究課題/領域番号 |
19K08742
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
鈴木 民夫 山形大学, 医学部, 教授 (30206502)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 炎症後色素沈着 / モデルマウス / アトピー性皮膚炎 / メラニン / メラニン代謝 / マクロファージ |
研究実績の概要 |
炎症後色素沈着(Post-Inflammatory Hyperpigmentation:PIH)モデルマウスを作成した。アトピー性皮膚炎モデルマウス(塩原モデル)作成方法に従って、hk14-SCF Tg/HRMマウスに0.5%の2,4-Dinitrofluorobenzene (DNFB) をハプテンとして連日2回塗布して感作し、感作1週間後から週2回、合計9回マウスの背部に0.15% DNFBを反復塗布した。35日後をweek0とし、1週間毎に色素沈着の経過を観察した。 その結果、DNFB塗布終了後にはマウスの背部に色素沈着が認められ、その後8週間後にかけて色素沈着が薄くなった。このマウス皮膚の組織学的観察を行ったところ、HE染色では、week0の皮膚標本で著明な表皮肥厚、明らかな基底層の障害がみられ、真皮には多くの炎症細胞浸潤、ならびにメラニン含有細胞を認め、アトピー性皮膚炎や接触皮膚炎の組織像と同様な湿疹の所見が得られた。しかし、その2週後では、week0でみられた表皮変化や基底層の変化はみられなくなった。一方で、真皮ではメラニン含有細胞を多数認めた。フォンタナマッソン染色では、week0で表皮基底層と表皮全層にわたってメラニンの増生を認め、真皮においてもメラニン含有細胞の増加を認めた。これらの変化は、2週間後には減少していたが、表皮内のメラニン量の減少に比べ、真皮のメラニンは多く残存していた。一般に、病理組織学的にPIHは基底細胞の空胞化を伴わない表皮メラニンの増加と真皮メラノファージの増加と定義されるため、week2以降の変化は炎症後色素沈着組織所見と一致しており、本マウスはPIHモデルマウスをあることが示された。電顕による観察では、真皮のメラニン含有細胞の多くはマクロファージであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目にはPIHモデルマウスを作成することが最大の目標であったが、既に確立できている。また、免疫組織学的解析、分子生物学的解析によりサイトカイン環境を明らかにした。さらに、電子顕微鏡的観察は既に終了している。皮膚のメラニン量を化学的、および画像解析に定量化もすでに終了している。このように1年目に行う計画はおおよそ実施終了しており、研究遂行はおおよそ予定通りである。
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今後の研究の推進方策 |
PIHの真皮に認められるメラニン含有細胞の性状、特徴を明らかにする。電顕による観察では、真皮におけるメラニン含有細胞の多くはマクロファージであり、一部は線維芽細胞であった。この中で、1年目の研究成果では、PIHに最も関係しているのはCD68+,F4/80-のマクロファージであった。そこで、この細胞を単離し、RNAシークエンス等でその特徴を解析する。 また、PIHの悪化因子に紫外線曝露があると言われているが、その影響を実証する。慢性炎症によるPIHモデルマウスに紫外線曝露を炎症直後としばらく後に行った群を作成し、紫外線曝露の影響をメラニン量測定とともに組織学的に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
モデルマウス作成にあたって使用したマウスの数が予定より少なかったために差額が生じた。来年度の助成金と合わせて、マウス飼育代や物品費として使用したい。
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