炎症後色素沈着(Post-Inflammatory Hyperpigmentation:PIH)に対する新規治療法を確立する目的で、本研究の2年目に、一般臨床的にPIHに対して現在使用されている4種類の薬剤をマウスモデルの背中に外用して、PIH消退を促進する効果について検討した。その結果、2種類の薬剤において、外用した部位のPIHがコントロール(ワセリン)に対して有意に早期に消退することを見出した。そこで、本年度はマウスの個体数を増やして追試を行い、その効果を確認した。しかしながら、その結果では、1回目の実験で認められたPIH消退促進効果は、認められなかった。1回目に差がみられたのは個体差によるものであった可能性が大きい。 一方、2020年度の途中より、一部のマウスにおいて、PIHが8週間では自然消退しなくなり、消失には16週間以上を要するようになった。この原因を解析したところ、これまでは真皮下層に見られた肥満細胞が、真皮上から中層にかけて非常に多くみられ、さらにほとんどの肥満細胞はヒスタミンを脱顆粒している像が認められた。マクロファージについては、これまでの組織像と大きな差異は認められなかった。つまり、PIHが8週間で消退しない理由は、メラニン分解系の遅延ではなく、肥満細胞から放出された多量のヒスタミンによるメラニン合成促進効果によるものと考えられた。現在、この肥満細胞の動きについて解析中である。 予定した真皮マクロファージの単離実験については、上記の肥満細胞の影響により行うことができず、今後の研究予定となっている。
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