研究課題/領域番号 |
19K08745
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
吉沢 隆浩 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 助教 (40713392)
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研究分担者 |
古庄 知己 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (90276311)
水本 秀二 名城大学, 薬学部, 准教授 (40443973)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | エーラス・ダンロス症候群 / Chst14遺伝子欠損マウス / 疾患モデル動物 |
研究実績の概要 |
筋拘縮型エーラスダンロス症候群(mcEDS)は、本学医学部から近年報告された疾患である。mcEDS患者では、転倒などの軽微な外圧による巨大皮下血腫などの重篤な皮膚症状を呈する。本症では、CHST14遺伝子の変異によって、糖鎖修飾(デルマタン硫酸付加)を介したコラーゲン細線維の集合に必要な酵素(D4ST1)の活性消失が認められる。患者皮膚ではコラーゲン細線維の集合不全が認められ、CHST14遺伝子と皮膚機能との関連性が示唆されるが、病態メカニズムの解明や治療法確立には至っていない。 mcEDSの疾患モデル動物として、Chst14遺伝子ホモ接合体欠損マウスが期待されたが、その殆どが胎生致死であった。そこで、申請者は出生率の改善方法を独自に確立し、成獣での解析を可能とした(BALB.Chst14 KOの樹立)。BALB.Chst14 KO成獣の皮膚では、創傷治癒の遅延や圧迫による障害、コラーゲン細線維の集合不全など患者の病態に近い表現型を認めた。さらに、CRISPR/Cas9によるゲノム編集でChst14 floxマウスを作出し、CreERT2マウスとの交配でコンディショナルKOマウスを作出した。 2020年度は主に、皮膚表現型の原因について詳細な解析を行った。皮膚線維芽細胞の初代培養では、BALB.Chst14 KOで細胞機能の低下が示唆された。また、圧迫後の皮膚ではコラーゲン細線維の変形を認めた。このことから、Chst14は細胞機能と細胞外マトリックスの構造(強度)の両方の維持に重要である可能性が示唆された。一方で、作出したChst14コンディショナルKOマウスは遺伝子欠損効率が悪く、薬剤投与条件の最適化が必要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BALB.Chst14 KOの解析は、概ね当初の予定通りに実施できた。タモキシフェン投与依存型Chst14コンディショナルKOマウス(Chst14 flox;CreERT2マウス)では、タモキシフェン投与条件の検討を行ったがKO効率が低かった。Chst14遺伝子欠損による皮膚機能の低下の原因を解明するために、皮膚線維芽細胞の初代培養を行ったところ、細胞機能の低下を認めた。
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今後の研究の推進方策 |
Chst14コンディショナルKOマウスでは十分な遺伝子欠損効率が得られなかった。そのため、2021年度は、皮膚線維芽細胞を用いて、BALB.Chst14 KOマウスの皮膚機能低下の原因を解明する。また、mcEDSと関連する分子で、初代培養線維芽細胞の機能改善効果を有するものを探索する。有用な分子が発見できれば、BALB.Chst14 KOマウスでの治療実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス流行により、予定していた学会がWeb開催等になり、旅費の使用がなかったため。次年度使用額については、細胞培養用品などの購入費用に充て、研究の発展に役立てる。
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