研究課題/領域番号 |
19K08746
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
國貞 隆弘 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (30205108)
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研究分担者 |
青木 仁美 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 講師 (10550361)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 色素細胞幹細胞(MSCs) / 幹細胞ニッシェ / HMGB2 / 白髪モデル |
研究実績の概要 |
X線照射による白毛化(毛包の色素細胞の喪失)の主因が色素細胞幹細胞(MSC)を支持する毛包ケラチノサイトのニッシェ機能の喪失であることから、X線照射後のケラチノサイトのプロテオーム解析により発現が変動する遺伝子に注目し、HMGB2遺伝子を同定した。この遺伝子のノックアウトマウスはX線による白毛化の閾値が低いという予備的な結果から、HMGB2が毛包ケラチノサイトに発現する新たなMSCのニッシェ因子と予想された。 本申請では、HMGB2ノックアウトマウスを作成し、白毛化を誘導してこの予想を検証する。さらHMGB2ノックアウトマウス由来の皮膚培養系を用いてHMGB2欠損あるいは過剰発現下でのMSCの動態を様々な指標で測定する。HMGB2を新たなMSCのニッシェ因子として確立し、白髪との関連及び小分子量化合物などを用いたHMGB2経路の操作による白髪の予防・回復を目指す。 出生率の低いHMGB2ノックアウトホモマウス(HMGB2-/-マウス)を十分に確保することに成功し、まず長期間自然状態に置き、ヒトの白髪のように加齢性の白毛化が促進されるかどうかを確認したところ、野生型と有意な差はなかった。次に、X線照射により白毛化を人工的に誘導したところ、HMGB2-/-マウスでは野生型に比べて同一線量で有意に白髪化が促進された。このことは、HMGB2が白毛化に関与することを示唆する。 金沢大学のコホート研究と連携して、人の老化現象としての白髪に関与する遺伝子をゲノムワイド関連解析により同定するプロジェクトは最初の測定・解析が順調に進み、現在白髪(あるいは年齢の割に髪が黒いこと)に関連する遺伝子を同定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HMGB2はX線によりケラチノサイトで発現が増加する遺伝子であり、もしMSCのニッシェとして機能していれば、X線照射により減弱したニッシェ機能を回復させるため(ニッシェ機能の恒常性を維持するため)に発現が上昇すると予想される。この予想が正しければ、HMGB2をノックアウトしたマウスはX線照射後の白毛誘導の域値が低下すると予想される。これまでに、CRISPR-Cas9を用いてHMGB2遺伝子のプロモーター領域とファーストエキソンをノックアウトしたマウスを作成した。HMGB2ノックアウトホモマウスは出生率が低いが、本年度は十分な親マウスを準備して統計的に有意な実験を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的であるHMGB2と白毛化の関連を支持する結果が得られた。HMGB2ホモノックアウトマウスの生産に必要なヘテロノックアウトマウスの飼育数を適切に維持し、来年度はX線以外の方法による白毛化誘導により、HMGB2と白毛化の関連をさらに明確にしたい。 HMGB2が期待通りの遺伝子であれば、金沢大学のコホート研究と連携した人の老化現象としての白髪に関与する遺伝子をゲノムワイド関連解析によりHMGB2が同定される可能性があり、その場合にはこのマウスが実験的な証拠になる。
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