研究課題
X線照射による白毛化(毛包の色素細胞の喪失)の主因が色素細胞幹細胞(MSC)を支持する毛包ケラチノサイトのニッシェ機能の喪失であることから、X線照射後のケラチノサイトのプロテオーム解析により発現が変動する遺伝子に注目し、HMGB2遺伝子を同定した。この遺伝子のノックアウトマウスはX線による白毛化の閾値が低いという予備的な結果から、HMGB2が毛包ケラチノサイトに発現する新たなMSCのニッシェ因子と予想された。本申請では、CRISPR-Cas9を用いてHMGB2ノックアウトマウスを作成し、白毛化を誘導してこの予想を検証した。さらHMGB2ノックアウトマウス由来の皮膚培養系を用いてHMGB2欠損あるいは過剰発現下でのMSCの動態を様々な指標で測定する。HMGB2を新たなMSCのニッシェ因子として確立し、白髪との関連及び小分子量化合物などを用いたHMGB2経路の操作による白髪の予防・回復を目指す。出生率の低いHMGB2ノックアウトホモマウス(HMGB2-/-マウス)を十分に確保し、長期間自然状態に置き、ヒトの白髪のように加齢性の白毛化が促進されるかどうかを確認したところ、野生型と有意な差はなかった。次に、X線照射により白毛化を人工的に誘導したところ、HMGB2-/-マウスでは野生型に比べて同一線量で有意に白髪化が促進された。HMGB2 KO マウスは放射線による毛包幹細胞のDNA 損傷が有意に増加していたこのことは、HMGB2が色素細胞幹細胞のニッシェを提供する毛包幹細胞の活性を制御することで白毛化に関与することを示唆する。ヒト表皮の免疫組織染色により、HMGB2 が年齢依存的に減少することが確認され、人の白髪とHMGB2が関連する可能性が示された。金沢大学のコホート研究と連携して、人の老化現象としての白髪に関与する遺伝子をゲノムワイド関連解析により同定するプロジェクトは最初の測定・解析が順調に進み、現在白髪(あるいは年齢の割に髪が黒いこと)に関連する遺伝子を同定している。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
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