研究課題/領域番号 |
19K08747
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
島内 隆寿 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (90399204)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ガレクチン7 / IL-4 / IL-13 / 表皮角化細胞 / stat6 / stabilizer / alarmin |
研究実績の概要 |
1)2次元培養正常表皮角化細胞におけるTh2サイトカイン (IL-4+IL-13) 刺激下でのガレクチン7 (Galectin-7: Gal-7) 発現制御とシグナル伝達機構の解明 IL-4+IL-13刺激により、表皮角化細胞からGal-7が放出されることを証明した。一方、Gal-7のmRNAの発現増強は認められなかった。このIL-4+IL-13誘導性のGal-7放出はstat6依存性であり、死細胞の増加による細胞障害によることを解明した。つまりGal-7のalarminとしての特徴を示す形となった。
2)3次元培養表皮モデルを用いたGal-7の機能解析 3次元培養表皮モデルにおいてもIL-4+IL-13誘導性の表皮角化細胞間へのGal-7の沈着を認めた。次に、レンチウイルスベクターを用いたshRNA法にてGal-7をknockdownさせた3次元培養表皮モデルを作成した。得られたGal-7+/- 3次元培養表皮モデルのIL-4+IL-13存在、非存在下における海面状態、E-cadherinの発現動態をHE染色法、免疫染色法を用いて評価した。その結果、Gal-7 knockdown 3次元培養表皮ではIL-4+IL-13存在下では表皮基底層を中心とする細胞接着障害を認めた。我々はこの細胞接着障害がGal-7のE-cadherinに対するstabilizer効果の破綻と推測したが、これを証明することはできなかった。次に、Gal-7 knockdown 3次元培養表皮モデルのIL-4+IL-13誘導性の細胞接着障害を外的に添加したrecombinant human Gal-7 (rhGal-7)が改善させるかを検討したが、有意な所見は認められなかった。 以上の結果を含めたこれまでのデータをまとめ、論文に提出中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Th2サイトカイン誘導性の表皮角化細胞からのGal-7の放出の意義として、当初は細胞接着障害を改善させるいわゆるstabilizer効果を予測していたが、in vitroの系ではこれを証明するには至らなかった。 今後、アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis: AD)のマウスモデルを作成して、ヒトと同様の所見が得られるか、検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
<ADモデルマウスにおける表皮角化細胞のGal-7発現動態とstabilizer外用剤としての治療応用の検証>
ADモデルマウスにおける表皮角化細胞のGal-7発現動態とGal-7外的塗布による治療応用への可能性を検証する。ADモデルマウスの一つである、NC/Ngaマウスを用いる。4% SDSで皮膚のバリアを破壊後、マウス背部および耳介部にダニ虫体成分を含む軟膏(ビオスタAD)を週2回、計3週間塗布することで、AD類似の皮膚症状を誘発する。惹起された病変部皮膚におけるGal-7の発現動態を免疫染色で確認する。このADモデルマウスはすでに確立されたプロトコールであり、局所皮膚におけるIL-4、IL-13の誘導も確認されている。このin vivoの系にAD様皮膚症状の惹起前あるいは惹起後にrecombinant mouse Gal-7 (rmGal-7)を塗布し、皮膚症状の改善効果を検証する。即ち、内在性のGal-7だけでは修復できない海面状態やバリア障害を外的に投与したGal-7が修復させるかを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでに得られているアトピー性皮膚炎の患者検体を用いた実験データ、ならびにin vitroの実験データをまとめて論文を作成、投稿し、現在2回目の査読が終了して投稿準備中である。この論文作成に時間を費やし、計画していたアトピー性皮膚炎のマウスモデルの実験への移行が遅れている状況である。そのため、マウス購入、試薬、飼育費等に計上していた金額が未使用になってしまった。論文が受理され次第、R2年度において予定していたマウス実験を実施するため、その費用にR1年度の繰り越し金を使用する予定である。
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