本研究では、OSM(オンコスタチンM)やIL(インターロイキン)-31の受容体を構成するOSMRβ(オンコスタチンM受容体β)が関与するそう痒の機序を明らかにすることを目的とした。OSMRβをコードするOSMR遺伝子は、皮膚のそう痒を主症状とする家族性限局性皮膚アミロイドーシス(FPLCA)の原因遺伝子であり、その変異によって起こるOSMRβの機能異常が、皮膚のそう痒に関与していると考えられている。本研究では、FPLCA患者2家系(OSMR-p.G618A、p.P694L)と同一のOSMR遺伝子変異をもつ2種類のプラスミドベクターを作成し、OSMRβ異常によって引き起こされる表皮角化細胞と後根神経節の細胞内シグナル伝達の異常を解析したが、それによるJAK-STAT経路やERK MAPキナーゼ経路への影響はウエスタンブロッティング法では見出すことができなかった。しかし、変異OSMRβ遺伝子を遺伝子導入した表皮角化細胞株(HaCaT)では、炎症系のケモカインであるCCL2の発現が増加していた。CCL2の増加とそう痒の関連は未だ明らかではないが、OSMR遺伝子異常によって、OSMに対する細胞応答に変化を生じることが明らかとなった。 また、本研究では表皮角化細胞と後根神経節細胞ともにOSM刺激によってそう痒に関連する受容体の発現量が減少あるいは増加することを明らかにした。この結果より、OSMが起痒物質に対する過敏性に影響を与える可能性がある。現在は、マウスにOSMを事前投与し、ヒスタミン、セロトニン、IL-31などの起痒物質に対するそう破行動への影響について検証を行っている。
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