研究課題/領域番号 |
19K08752
|
研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
宇原 久 札幌医科大学, 医学部, 教授 (40201355)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 悪性黒色腫 / シングルセルシークエンス / 次世代シークエンス / MAPK / バーコード |
研究実績の概要 |
本研究は、メラノーマの新鮮組織を用いて、メラノーマ1細胞ごとに発現している遺伝子群からクラスター化し、まずMAPK経路と細胞周期関連遺伝子の発現している群を集め、増殖や分裂に関わる分子群間の発現状況からシグナル発現の関連性を調べることを目的に、本年度は、まず安定した結果が出るような方法の確立を目指した。本研究の工程は主に、1)バーコードビーズを入れたマイクロウェル内の1ウェルに腫瘍細胞が1個ずつ入るように撒き、2)細胞を溶解してRNAをバーコードビーズに結合させ、3)マイクロウェルを遠心してバーコード結合RNAを回収し、cDNA合成後に、4)PCRで増幅させ、5)次世代シークエンサーでバーコード部分と遺伝子部分を別に読み、6)各ソフトでクラスター化して解析する、の6工程からなる。本年度は悪性黒色腫5例とメルケル細胞がん1例の手術検体について検討できた。1例は最終工程まで進めることができ、次世代シークエンサーにより発現しているmRNAを同定でき、解析を行っている。この症例では、メラノーマ細胞は大きく5つのグループ(クラスター)に分けられ、2つのクラスターでは腫瘍細胞はMAPK系とHLAクラスIが高発現し、クラスIIとPD-L1の発現が少ないことを示している等の関係性が明らかになった。残りの5症例については細胞分離の段階で得られた細胞量が少ない、あるいはPCRの段階で次世代シークエンスに進める質が確保できず、最終解析まで進めることができなかった。現在、研究工程を阻害している可能性のある、メラニンの除去、と組織から効率的に1細胞ずつに分離できる新たな酵素を使用して方法の改善を図っているところである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の工程は主に、1)バーコードビーズを入れたマイクロウェル内の1ウェルに腫瘍細胞が1個ずつ入るように撒き、2)細胞を溶解してRNAをバーコードビーズに結合させ、3)マイクロウェルを遠心してバーコード結合RNAを回収し、cDNA合成後に、4)PCRで増幅させ、5)次世代シークエンサーでバーコード部分と遺伝子部分を別に読み、6)各ソフトでクラスター化して解析する、の6工程からなる。本年度は悪性黒色腫5例とメルケル細胞がん1例の手術検体について検討できた。1例は最終工程まで進めることができ、次世代シークエンサーにより発現しているmRNAを同定でき、解析を行っている。残りの5症例については細胞分離の段階で得られた細胞量が少ない、あるいはPCRの段階で次世代シークエンスに進める質が確保できず、最終解析まで進めることができなかった。
末梢血検体と異なり腫瘍組織には線維成分が混じるため、効率よくシングルセルを回収することが研究の律速段階になっている。細胞を壊さないように効率よく分離できる酵素を探しているところである。また悪性黒色腫細胞が持つメラニン色素は酵素活性を阻害するため、いくつかの処理段階で問題を起こす。現在、メラニン色素の除去とメラニン色素の少ない検体やメラニンを持たない皮膚腫瘍を中心に効率を上げるための方策を検討しているところである。
|
今後の研究の推進方策 |
末梢血検体と異なり腫瘍組織には線維成分が混じるため、効率よくシングルセルを回収することが研究の律速段階になっている。細胞を壊さないように効率よく分離できる酵素を探しているところである。また悪性黒色腫細胞が持つメラニン色素は酵素活性を阻害するため、いくつかの処理段階で問題を起こす。現在、メラニン色素の除去とメラニン色素の少ない検体やメラニンを持たない皮膚腫瘍を中心に効率を上げるための方策を検討しているところである。
|