本研究は、メラノーマの新鮮組織を用いて、メラノーマ1細胞ごとに発現している遺伝子群からクラスター化し、まずMAPK経路と細胞周期関連遺伝子の発現している群を集め、増殖や分裂に関わる分子群間の発現状況からシグナル発現の関連性を調べることを目的に、本年度は、まず安定した結果が出るような方法の確立を目指した。本研究の工程は主に、1)バーコードビーズを入れたマイクロウェル内の1ウェルに腫瘍細胞が1個ずつ入るように撒き、2)細胞を溶解してRNAをバーコードビーズに結合させ、3)マイクロウェルを遠心してバーコード結合RNAを回収し、cDNA合成後に、4)PCRで増幅させ、5)次世代シークエンサーでバーコード部分と遺伝子部分を別に読み、6)各ソフトでクラスター化して解析する、の6工程からなる。本年度は悪性黒色腫5例とメルケル細胞がん1例の手術検体について検討できた。1例は最終工程まで進めることができ、次世代シークエンサーにより発現しているmRNAを同定でき、解析を行っている。この症例では、メラノーマ細胞は大きく5つのグループ(クラスター)に分けられ、2つのクラスターでは腫瘍細胞はMAPK系とHLAクラスIが高発現し、クラスIIとPD-L1の発現が少ないことを示している等の関係性が明らかになった。残りの5症例については細胞分離の段階で得られた細胞量が少ない、あるいはPCRの段階で次世代シークエンスに進める質が確保できず、最終解析まで進めることができなかった。現在、研究工程を阻害している可能性のある、メラニンの除去、と組織から効率的に1細胞ずつに分離できる新たな酵素を使用して方法の改善を図っているところである。また、解析が成功した症例についてはDNAエクソンシークエンスを行い、RNA発現を関連する遺伝子の変異と比較検討しているところである。
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