父親由来のXaと母親由来のXbの複合ヘテロ変異を持つ患児と両親の末梢血単核球および不死化B細胞を用い、IFNγ刺激後の細胞内STAT1リン酸化の程度をFACSで解析した。末梢血単核球では、患児と父親で無刺激で陽性であり、刺激後は患児で増強した。不死化B細胞では、父親で無刺激で陽性、刺激後は患児と父親とも同程度に増強した。母親はいずれも陰性であったことから、Xb変異はXa変異の機能を修飾する可能性が考えられた。また、末梢血単核球におけるI型IFN応答遺伝子の発現をqRT-PCRで検討した結果、患児と父親では高値であり、患児と父親で発現量に差はなかった。さらに、皮疹の免疫組織学的検討では、患児ではMPO陽性好中球とCD68陽性マクロファージが、父親ではCD68陽性マクロファージとCD4、CD8陽性T細胞が主に浸潤し、pSTAT1の発現は両者ともに陽性で、父親で強く発現が見られた。次に、野生型XとXa、Xb変異遺伝子をそれぞれ発現ベクターに組み込んだプラスミドを作成して293T細胞に導入しXの発現をウェスタンブロットで検討したが、分子量や発現量に差はなかった。これらの細胞を用い、IFNγ刺激後のIFN刺激応答因子(ISRE)とγ活性化配列(GAS)のレポーターアッセイで変異による差異の検出を試みた。293T細胞およびX欠損HAP1細胞を用いたIFNγ刺激16時間後のGAS-LucアッセイとIRSE-Lucアッセイでは野生型X、Xa、Xb変異ともにLuc活性の低下は明らかとなったが、変異による差を見出だせなかった。293T細胞におけるTRIFおよびIRF3の過剰発現によるIfna4プロモーターの活性化を確認し、野生型XとXaあるいはXbの過剰発現した場合の活性化の変化を比較したが、いずれも同様の抑制効果が観察され、変異による差をとらえることはできなかった。
|