研究課題/領域番号 |
19K08756
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
鎌田 弥生 順天堂大学, 大学院医学研究科, 助教 (00410035)
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研究分担者 |
高森 建二 順天堂大学, 医学部, 特任教授 (40053144)
冨永 光俊 順天堂大学, 大学院医学研究科, 先任准教授 (50468592)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | セマフォリン / かゆみ / 表皮角化細胞 / アトピー性皮膚炎 / 表皮内神経線維 / 三次元培養表皮モデル |
研究実績の概要 |
アトピー性皮膚炎(AD)の難治性のかゆみは、不眠、抑うつ、集中力欠如など、患者のQuality of Lifeを大きく低下させることから、鎮痒薬の開発が急務とされている。ADのかゆみ過敏は、本来は真皮内に存在する感覚神経線維が表皮内に侵入・増生し、角層直下まで伸長することが一因と考えられている。その原因の1つとして、表皮角化細胞が産生するセマフォリン3A(Sema3A)の産生減少がある。Sema3Aは神経を退縮させる作用があり、先行研究ではADモデルマウスに対するSema3A軟膏の有効性が明らかにされたが、臨床応用には問題点も多い。そこで、AD病変部で減少しているSema3Aの産生を誘導できれば、Sema3A軟膏に匹敵する鎮痒効果が得られると考えた。そのためには、「AD病変部でなぜSema3Aの発現が変動するのか?」という疑問を解決する必要がある。 令和3年度は、前年度に引き続き、三次元培養ADモデルを確立するため、三次元培養表皮を用いて、角層バリア破壊モデルの作製や、フィラグリン(FLG)などのノックダウンモデルの作製を試みた。その結果、角層バリア破壊モデルでは、AD病変部と同様に一過性のSema3Aの発現減少と神経成長因子の発現増加が認められた。また、FLG等をノックダウンした正常ヒト表皮角化細胞の単層培養では、Sema3Aの発現が減少し、ノックダウンした細胞を重層化させた三次元培養表皮でも同様の結果が得られた。ADの病態形成に関わるIL-4やTNF-αなどのサイトカインを添加しても、Sema3Aの発現は減少せず、むしろ増加したが、FLGなどをノックダウンすることで、サイトカインによるSema3Aの発現増加作用は消失した。以上の結果より、AD病変部におけるSema3Aの発現減少は炎症よりもバリア機能障害に伴って生じていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度までの成果を元に、AD病変部におけるSema3Aの発現減少機序を解明するため、三次元培養ADモデルの作製を試みた結果、AD病変部におけるSema3Aの発現減少メカニズムには炎症よりもバリア機能障害が関与する可能性が明らかとなった。角層バリア破壊モデルの作製やノックダウンモデルの作製に当たり、条件検討に時間を要したため、当初の計画よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、表皮角化細胞に真皮線維芽細胞とラット後根神経節(DRG)ニューロンまたはヒトiPS細胞由来感覚神経を融合させた、培養三次元モデルの構築を目指し、異なる細胞の共培養条件の検討などを実施する予定である。最終的に3種類の細胞を融合させた皮膚モデルを作製し、バリア破壊やFLGノックダウンなどの処理により、Sema3Aの発現が減少し、神経線維が表皮内に伸長してくることを確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の条件検討に予想以上に時間を要し、当初の計画より実施が遅延したため。次年度は本研究で作製したAD類似表皮角化細胞、ヒトiPS細胞由来感覚神経、ヒト真皮線維芽細胞の共培養条件を検討する予定である。最終的には神経共培養三次元ADモデルを作製し、AD病変部におけるSema3Aの発現減少メカニズムと、AD病変部における表皮内神経線維の動態を解明する。
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