研究課題
乾癬は全身に浸潤を伴い、鱗屑を付す紅斑を呈する慢性皮膚疾患であるが、生活の質を著しく障害するだけでなく、関節炎、精神症状、メタボリックシンドロームなどとの関連を示唆される全身性炎症性疾患である。乾癬治療には外用療法、光線療法、内服療法、生物学的製剤があるが、2017年3月に新たにホスホジエステラーゼ(Phosphodiesterase; PDE) 4阻害薬の内服療法が追加されさらに多様化している。その中で、光線療法は古くから施行されている治療法であるが、一旦寛解すると長期に寛解が維持できることが知られているがその機序は未だ解明されていない。また、新たに登場したPDE4阻害薬内服を併用することで相乗効果がみられる。本研究では、光線療法の作用機序、PDE4阻害薬の作用機序、そしてその相乗効果を検証することを目的とする。2019年度は光線療法が乾癬に与える影響について検討した。光線療法がIL-17A、IL-17F、およびIL-22などの乾癬に重要な炎症性サイトカインの皮膚のmRNA発現を抑制するとともに、制御性T細胞を誘導することを明らかにした。2020年度はPDE4阻害薬が乾癬に与える影響について検討した。PDE4阻害薬はIL-17A、IL-17F、およびIL-22などの乾癬に重要な炎症性サイトカインの皮膚のmRNA発現を抑制する一方で皮膚での制御性T細胞の誘導はみられなかった。脾臓における制御性T細胞、B細胞の誘導がみられた。2021年度は、PDE4阻害薬で誘導された制御性B細胞の機能を評価した。PDE4阻害薬を投与したイミキモド誘導乾癬モデルマウスから制御性B細胞が豊富に含まれるCD1dhiCD5+細胞を脾臓から分離し、別のマウスに養子移入後、イミキモドで乾癬様皮疹を誘導したところ、皮疹の軽減がみられた。PDE4阻害薬で誘導された制御性B細胞が機能的であることを確認した。
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Journal of Dermatological Science
巻: 104 ページ: 55~62
10.1016/j.jdermsci.2021.08.001