研究課題
栄養障害型表皮水疱症(DEB)は、表皮真皮間接合を担う基底膜関連分子の一つであるVII型コラーゲン(COL7)遺伝子に変異を生じ発症する。DEB患者は、外的刺激に伴い容易に水疱を形成し、食道狭窄など重篤な合併症を引き起こす。中でも有棘細胞癌(SCC)は発症頻度が高く、致死的になることも稀ではない。本研究の目的は、DEB患者におけるSCCの発症と遠隔転移機序を解明することである。方法として、COL7遺伝子をノックアウトした培養表皮細胞(DEB患者の表皮細胞のモデル)を作成し、19,500種類の遺伝子を1細胞につき1遺伝子ずつランダムにゲノム編集し、癌化・浸潤・転移を来した細胞から標的となった遺伝子を同定する。その際、ホストとなる細胞をEGFP標識することで浸潤転移細胞を容易に同定可能とする。 2021年度は、2020年度までに作成した①Cas9及びEGFP発現不死化表皮HaCaT細胞(健常人モデル)、②Cas9及びEGFP発現COL7遺伝子ノックアウトHaCaT細胞(DEB患者モデル)、③網羅的に遺伝子がノックアウトされたCas9及びEGFP発現HaCaT細胞(健常人のSCCモデル)、④網羅的に遺伝子がノックアウトされたCas9及びEGFP発現COL7遺伝子ノックアウトHaCaT細胞(DEB患者のSCCモデル)の4種の細胞群を、それぞれSCIDマウスに皮下注入した。5週間後、増大した皮下腫瘍、肝臓、肺をサンプリングし、腫瘍の性状と転移の有無を評価したが、いずれの細胞でも肺や肝臓への転移細胞を認めなかった。一方①と②を比較すると、COL7遺伝子ノックアウトHaCaT細胞の腫瘍は腫瘍全体の構築が不整で、周囲に繊維化や血管増生が見られた。これらの結果から、COL7遺伝子をノックアウトすることで、皮膚腫瘍の基底膜構築異常を介した周囲の組織環境変化が引き起こされる可能性が示唆された。
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