研究課題/領域番号 |
19K08770
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
大沢 匡毅 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10344029)
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研究分担者 |
矢澤 重信 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 助教 (30392153)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 尋常性白斑症 / メラノサイト / モデルマウス / 自己免疫疾患 |
研究実績の概要 |
尋常性白斑はメラノサイトが消失してしまうことにより皮膚に白斑が形成される疾患であり,白斑という外見上の病変によって患者のQOLが著しく低下してしまうことが問題である。尋常性白斑の病態には環境的要因,メラノサイトの異常,および免疫的な素因等が複合的に関与していることが示されているが,このような高次元な現象をin vitroで再現することは困難であり,その病態の理解には疾患モデル動物を用いたin vivoレベルでの研究が必須である。しかし,現存の尋常性白斑症モデル動物には様々な問題点があり,研究の推進の障害になっている。そこで,本研究では、ヒトの尋常性白斑を模倣する事ができる疾患モデルマウスを作製することともに,モデルマウスを用いて尋常性白斑発症の細胞的および分子的基盤を解明することを目的に研究を進める。 初年度は,尋常性白斑モデルマウスを作製することに注力した。ヒトと異なりマウスの毛包間上皮にはメラノサイトが存在せず,また皮膚は体毛によって覆われている。このため野生型マウスでは皮膚が白斑化する過程を観察する事が困難である。そこで,皮膚上皮にメラノサイトが有するK14-SCFトランスジェニックマウスやヘアレスマウスが尋常性白斑モデルマウスとして活用されている。しかし,これらのマウスは免疫系に異常があることが示されており,尋常性白斑症の病態を正確に再現できないことが示唆されていた。そこで,本研究では,遺伝子編集技術を応用し,毛包間上皮にメラノサイトを有しヘアレス化したマウスを作製した。また,メラノサイトに対する免疫反応を効率的に誘導するために,メラノソーム構造因子であるPmelタンパク質を認識するT細胞受容体(TCR)をT細胞特異的に発現するノックイントランスジェニックマウスを作製した。今後はこれらのマウスを交配させ得られたマウスについて尋常性白斑モデルとしての有用性を評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに以下の進展があった。 各種ノックインマウスを作成するために,マウスES細胞に対しCRISPR/Cas9システムを用いて遺伝子編集を行なった。その結果,以下の3つのエレメントをそれぞれノックインしたマウスを得ることができた。トリプルノックインしたマウスを作製し,新規尋常性白斑症モデルマウスを作製することを目指している。 1)メラノサイト抗原(Pmel)を認識するTCRα/β鎖をT細胞に発現させるために,テトラサイクリン応答性にTCRα/β鎖を発現するカセットをCD2遺伝子座にノックインした。これによって,T細胞発生時に起こるポジティブ/ネガティブセレクションによる自己応答性クローン排除の影響を避けることができテトラサイクリン応答性にメラノサイトに対する免疫反応を誘導することが可能になると考えられる。 2)K14-SCFカセットをマウスES細胞のRosa26遺伝子座にノックインした。これによってマウスの皮膚上皮にSCFが強制発現を強制発現させ毛包間皮膚上皮にメラノサイトが存在するようにする。 3)毛包の毛球部特異的に発現するKrt35の遺伝子座にヘアレス変異遺伝子(Dlx3-TDO)をマウスES細胞にノックインした。これによって無毛化マウスを作製した。 以上の成果により本研究は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまでに作製したノックインマウスを交配させトリプルノックインマウスを作製し,尋常性白斑症マウスモデルとしての有効性を評価する。有効性が確認されれば,トリプルノックインマウスからES細胞株を作製する。その後,遺伝子編集技術を用いて,作製されたES細胞に対し細胞性免疫に関与する分子をノックアウトした後,マウスを作製する。作製されたマウスの表現型解析を通じて,尋常性白斑症に影響を及ぼす分子や細胞系譜を特定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
岐阜大学動物飼育施設に委託しているマウス飼育費の請求が遅れたため,前年度の決算時に計上することができなかったため次年度使用額が生じた。本飼育費は既に支払が完了しており,次年度予算使用計画に変更が生じることはない。
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