尋常性白斑はメラノサイトが消失してしまうことにより皮膚に白斑が形成される疾患であり,白斑という外見上の病変によって患者のQOLが著しく低下してしまうことが問題である。尋常性白斑の病態には環境的要因,メラノサイトの異常,および免疫的な素因等が複合的に関与していることが示されているが,このような高次元な現象をin vitroで再現することは困難であり,その病態の理解には疾患モデル動物を用いたin vivoレベルでの研究が必須である。しかし,現存の尋常性白斑症モデル動物には様々な問題点があり,研究の推進の障害になっている。そこで,本研究では、ヒトの尋常性白斑を模倣する事ができる疾患モデルマウスを作製することともに,モデルマウスを用いて尋常性白斑発症の細胞的および分子的基盤を解明することを最終目標として掲げ、そのための足がかりとして有用な疾患モデルマウスを構築することを目指した。 ヒトとは異なり、マウスの毛包間上皮にはメラノサイトが存在せず,また皮膚は体毛によって覆われている。このため野生型マウスでは皮膚が白斑化する過程を観察する事が困難である。そこで,本研究では,まず初めに,毛包間上皮にメラノサイトを有しヘアレス化したマウスを作製した。また,メラノサイトに対する免疫反応を効率的に誘導するために,メラノソーム構造因子であるPmelタンパク質を認識するT細胞受容体(TCR)をテトラサイクリン誘導性かつT細胞特異的に発現するノックイントランスジェニックマウスを作製した。これらのマウスを交配させてトリプルノックインマウスを得た。得られたマウスについて尋常性白斑モデルとしての有用性を評価したところ、メラノーマ細胞の移植とCpG感作によって白斑形成を認め、一部有用性が示された。今後、より疾患発症機序を模倣した感作法を検討し、尋常性白斑モデルとしてさらなる有用性の検討を行う予定である。
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