研究課題
本研究の目的は、ミエロイド系細胞の抑制型免疫受容体CD300fに着目して自己免疫性水疱症の疾患モデルを解析し、免疫複合体によるミエロイド系細胞の活性化と自己免疫性水疱症の制御メカニズムを解明することである。表皮下水疱症の代表例として水疱性類天疱瘡(17型コラーゲンに対する自己抗体が原因)と後天性表皮水疱症(7型コラーゲンに対する自己抗体が原因)があり、マウスの17型コラーゲンあるいは7型コラーゲンに対する兎ポリクローナル抗体の作製を試みた。その結果、抗体価の高い抗7型コラーゲン抗体の作製に成功し、後天性表皮水疱症のマウスモデルを作製することができた。好中球欠損マウスの解析により、この病態は好中球に強く依存することが示された。他方、野生型とCD300f欠損マウスに対して後天性表皮水疱症のマウスモデルを試した結果、臨床スコアや皮膚の炎症細胞浸潤に関して、両者で有意な差は認められなかった。また、野生型とCD300f欠損マウスの骨髄から分離した好中球を免疫複合体(7型コラーゲンと抗7型ポリクローナル抗体)で刺激したときの好中球の活性化レベル(炎症性サイトカインの産生量など)に関して、両者で差は認められなかった。また、CD300fリガンドであるセラミドを固相化したプレート上で同様の実験を行っても両者で有意な差は認められなかった。これらの結果から、後天性表皮水疱症のマウスモデルにおいて、好中球に発現するCD300fは好中球の集積・活性化に影響せず、その病態形成に大きく寄与しないことが示唆された。現在、マウスの17型コラーゲン抗体を利用した水疱性類天疱瘡モデルの作製を試み、その病態制御機序の解明を続けている。
3: やや遅れている
マウスの7型コラーゲンに対する兎ポリクローナル抗体の作製に成功し、後天性表皮水疱症のマウスモデルを作製して、その病態が好中球に強く依存することを示すことができた。また、CD300f欠損マウスの解析により、CD300fは免疫複合体による好中球の活性化や後天性表皮水疱症のマウスモデルの病態に大きく影響しないことを示した。しかし、抗17型コラーゲン抗体を利用する水疱性類天疱瘡モデルの病態制御機構の解析が遅れており、本研究はやや遅れていると考えられる。
今後、マウスの17型コラーゲンに対する、抗体価の高い、兎ポリクローナル抗体の作製に努め、水疱性類天疱瘡のマウスモデルを確立しながら、野生型やCD300f欠損マウスなどの遺伝子改変マウスの解析を行い、水疱性類天疱瘡モデルの病態制御機構の解明を目指す。
新型コロナ感染の蔓延に伴い、年度内における実験に必要な物品の調達が遅れたため、予定していた実験、特に、マウス実験の解析が遅延した。次年度において、水疱性類天疱瘡のマウスモデルの解析に必要な研究費(マウス代など)を使用する。
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