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2019 年度 実施状況報告書

腸内細菌-皮膚ネットワークの構築を目指して;皮膚機能分子の新規制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K08783
研究機関星薬科大学

研究代表者

五十嵐 信智  星薬科大学, 薬学部, 講師 (40409363)

研究分担者 今 理紗子  星薬科大学, 薬学部, 特任講師 (90779943)
太田 嗣人  旭川医科大学, 医学部, 教授 (60397213)
岩崎 雄介  星薬科大学, 薬学部, 講師 (10409360)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード腸内細菌 / アクアポリン / 皮膚 / 糖尿病 / 加齢 / ノトバイオート
研究実績の概要

近年、体内の水輸送にアクアポリン(AQP)と呼ばれる水チャネルが重要な役割を担っていることが明らかとなってきた。ヒトにおいてAQPは、AQP0からAQP12までの13種類が存在し、全身の様々な組織に分布していることが知られている。申請者はこれまでに、AQPの発現・機能の変化と疾患発症との関連について種々検討を行ってきた。その中で、大腸のAQPの発現を腸内細菌が制御し、この制御に腸内細菌代謝産物が関与していることを見出した。この知見は、生命活動に重要な水の動きを、生体と共生している腸内細菌が制御していることを明らかにした非常に興味深いものであった。本研究では、腸内細菌との関係性が不明瞭であった組織「皮膚」に着目し、皮膚のAQPと腸内細菌との関連を明らかにする中で、腸内細菌が皮膚機能に影響を及ぼす新たな分子メカニズムを見出し、皮膚疾患に対する新規治療戦略を構築することを目的とした。
今年度は、まず、皮膚におけるAQPの役割を見出す目的で、副作用として皮膚乾燥が生じる抗がん剤をマウスに処置した際に、皮膚の状態ならびにAQPの発現量がどのように変化するのかを調べた。次に、腸内細菌と皮膚AQPとの関係を見出すに先立ち、腸内細菌の変動が報告されている各種疾患モデルマウスを用いて、皮膚におけるAQPの発現解析を行った。以上の解析結果から、皮膚のAQPは皮膚機能の維持に重要であり、腸内細菌の変動と皮膚AQPとの間にはなんらかの関連があることが明らかとなった。今後、腸内細菌と皮膚AQPとの直接的な関係性について、検討する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

皮膚におけるAQPの役割を見出す目的で、副作用として皮膚乾燥が生じる抗がん剤エルロチニブをマウスに処置した際に、皮膚の状態ならびにAQPの発現量がどのように変化するのかを調べた。その結果、エルロチニブを処置したマウスでは皮膚の乾燥が認められ、この際に、皮膚に多く発現しているAQP3が有意に低下することが明らかとなった。このことから、皮膚のAQP3は血管側から角質側への水の輸送を制御していると考えられ、この結果はAQP3ノックアウトマウスを用いた過去の知見と一致した。
次に、腸内細菌と皮膚AQPとの関係を見出すに先立ち、腸内細菌の変動が報告されている各種疾患モデルマウスを用いて、皮膚におけるAQPの発現解析を行った。ストレプトゾトシン誘発1型糖尿病モデルマウスの皮膚の状態を調べたところ、角質水分量の低下が認められた。この際、皮膚に最も多く発現しているAQP3の発現量が著明に低下していることが明らかとなった。この結果は、糖尿病患者が乾皮症を引き起こしやすいとする臨床報告と一致しており、皮膚AQP3の低下がその要因の一つである可能性を示すものであった。一方、老齢マウスと若齢マウスの皮膚の状態を観察したところ、老齢マウスでは若齢マウスと比べて皮膚の乾燥が認められた。また、AQPの発現量を解析したところ、発現が認められたAQP分子種のすべてにおいて、老齢マウスでは若齢マウスと比べて有意に低下していた。なかでも、AQP3の発現低下は顕著であり、これが原因で老齢時には皮膚の乾燥が生じている可能性が考えられた。
以上の結果は、腸内細菌叢の変化が認められる糖尿病や加齢時には、皮膚のAQPが大きく変動することを初めて見出したものであり、本年度の研究計画に基づいて、おおむね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

これまでの結果から、種々の疾患モデル動物において、皮膚におけるAQPの発現量が大きく変化することが明らかとなった。しかしながら、これらAQPの発現変動が腸内細菌叢の変動に直接関与したものであるかどうかは不明なままであった。今後、腸内細菌叢を変動させるほかのモデル動物を用いて、腸内細菌叢と皮膚AQPの発現量を解析するとともに、無菌動物に腸内細菌を移植するノトバイオートシステムを用いることにより、両者の直接的な関係性を見出す。

次年度使用額が生じた理由

本年度の研究計画に基づいて、おおむね順調に進展しているものの、次年度への繰越金がわずかに生じた。今年度使用しきれなかった分は、次年度に繰り越すこととする。なお、研究費は、マウス組織からのタンパク抽出やRNA抽出、PCRの試薬および消耗品に用いる。また、国際誌への論文投稿を目指し、研究費の一部はその投稿料に充てる。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Epidermal Growth Factor Receptor Tyrosine Kinase Inhibitor Erlotinib Induces Dry Skin via Decreased in Aquaporin-3 Expression2020

    • 著者名/発表者名
      Ikarashi Nobutomo、Kaneko Miho、Watanabe Tomofumi、Kon Risako、Yoshino Makana、Yokoyama Takatoshi、Tanaka Riho、Takayama Naoya、Sakai Hiroyasu、Kamei Junzo
    • 雑誌名

      Biomolecules

      巻: 10 ページ: 545~545

    • DOI

      doi: 10.3390/biom10040545

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Study of the Mechanism Underlying the Onset of Diabetic Xeroderma Focusing on an Aquaporin-3 in a Streptozotocin-Induced Diabetic Mouse Model2019

    • 著者名/発表者名
      Ikarashi Nobutomo、Mizukami Nanaho、Kon Risako、Kaneko Miho、Uchino Ryogo、Fujisawa Izumi、Fukuda Natsuko、Sakai Hiroyasu、Kamei Junzo
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 20 ページ: 3782~3782

    • DOI

      doi: 10.3390/ijms20153782

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 抗がん剤エルロチニブによる皮膚乾燥メカニズムの解析2019

    • 著者名/発表者名
      田中李歩, 金子未歩, 髙山直也, 横山貴俊, 吉野真花奈, 川崎 藍, 今理紗子,五十嵐信智, 酒井寛泰, 亀井淳三
    • 学会等名
      第140回日本薬理学会関東部会
  • [学会発表] 糖尿病性乾皮症に対する白虎加人参湯の有用性の検証~アクアポリンに着目した科学的エビデンスの構築~2019

    • 著者名/発表者名
      五十嵐信智
    • 学会等名
      第40回和漢医薬学総合研究所特別セミナー
    • 招待講演

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公開日: 2021-01-27  

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