研究課題
近年、体内の水輸送において、アクアポリン(AQP)と呼ばれる水チャネルが重要な役割を担っていることが明らかとなってきた。申請者はこれまでに、AQPの発現・機能の変化と疾患発症との関連について種々検討を行ってきた。その中で、大腸のAQPの発現を腸内細菌が制御し、この制御に腸内細菌代謝産物が関与していることを見出した。本研究では、腸内細菌との関係性が不明瞭であった組織「皮膚」に着目し、皮膚の機能分子であるAQPと腸内細菌との関連を明らかにする中で、腸内細菌が皮膚機能に影響を及ぼす新たな分子メカニズムを見出し、皮膚疾患に対する新規治療戦略を構築することを目的とした。令和元年度は、皮膚におけるAQPの役割を抗がん剤処置皮膚乾燥モデルマウスや老齢マウスを用いて明らかにした。令和2年度は、腸内細菌叢の変動が知られている2型糖尿病モデルマウスや腸内細菌を移植するノトバイオートマウスを作製することにより種々検討し、腸内細菌が皮膚のAQPの発現量をコントロールしている可能性を示した。令和3年度では、これらの結果を受けて、腸内細菌による皮膚AQPの発現調節機構について、腸内細菌代謝産物に注目し、検討を行った。その結果、皮膚に最も多いAQP3の発現量が、腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸であるプロピオン酸や酪酸によって制御されていることが明らかとした。したがって、腸内細菌叢が変動すると、その代謝産物の量が変化し、皮膚のAQPを変動させ、これが原因で種々の皮膚疾患が発症している可能性が示唆された。一方、本研究と同時に、AQP3を変動させる物質・天然物を探索したところ、カンナビジオールや隈笹エキスに皮膚AQP3の増加作用があることが見出され、これらが皮膚疾患に有用である可能性が考えらえた。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
Healthcare
巻: 9 ページ: 761~761
10.3390/healthcare9060761
Pharmaceuticals
巻: 14 ページ: 879~879
10.3390/ph14090879
https://polaris.hoshi.ac.jp/kyoshitsu/seitaiyakuri/BiomolecularPharmacology/index.html