研究課題
臨床の場での患者との出会いを契機として,NOD2遺伝子の変異により自己炎症的機序により肉芽腫をきたすブラウ症候群の解析に従事し,その病態解明と病態に基づいた治療薬の開発を目指して取り組んできた。この中で京都大学iPS研究所との共同研究として患者由来iPS細胞を樹立し,遺伝子の強制発現系を用いない細胞モデルとして初めて,変異NOD2をもつ細胞がNF- κ Bの転写亢進やサイトカインの産生亢進を示す系を確立することができた。しかしその中で,変異NOD2を発現する単球が,リガンドであるMDPが存在しない状態では機能獲得型としての表現系を呈するのに対して,MDPに対してはむしろ低反応性を示すという奇異な現象を見出し,その機序の解明を試みてきた。初年度はMDP以外で単球を活性化し得る物資に対する反応性を変異の有無による差異に着目して検証することで,活性化物質毎にそれが変異NOD2が炎症の制御に直接関わっていると想定される経路,間接的に関わる経路,NOD2に関わらない経路のいずれに関与するかを検証した。平行してMDPに対してはむしろ低反応性を示すという現象がなぜ引き起こされるかを検証するため,変異の有無,MDP刺激の有無について条件分けを行い,リン酸化プロテオミクス解析を実施した結果,炎症の制御に関わっていると考えられるある蛋白のリン酸化が,変異NOD2をもった細胞に特異的にリン酸化されることを見出した。2年目に当たる本年度は,リン酸化蛋白の同定ための実験系の確立に努めた。その過程で,最近特発性のサルコイドーシスの治療にJAK阻害剤が有効であることが報告されたことから,我々の実験系においても NOD2の誘導にIFNγを用いていることからNOD2の下流シグナルにおいてNF-κBのみならず,GASあるいはIRSEの転写経路が関わるかの検証を行なった。
2: おおむね順調に進展している
患者由来iPS細胞から分化誘導し,ブラウ症候群患者で同定された変異NOD2を発現する単球を用いた検証から,リガンドであるMDPが存在しない状態では機能獲得型としての表現系を呈するのに対して,MDPに対してはむしろ低反応性を示すという奇異な現象を見出し,その機序の解明を試みてきた。iPS細胞から分化誘導した単球を,NOD2変異の有無,MDP刺激の有無について条件分けを行い,リン酸化プロテオミクス解析を実施した前年度の結果から,炎症の制御に関わっていると考えられるある蛋白のリン酸化が,変異NOD2をもった細胞に特異的にリン酸化されることを見出し,これらリン酸化蛋白の同定ための実験系の確立に努めた。さの過程で,最近特発性のサルコイドーシスの治療にJAK阻害剤が有効であることが報告されたことから,我々の実験系においても NOD2の誘導にIFNγを用いていることからNOD2の下流シグナルにおいてNF-κBのみならず,GASあるいはIRSEの転写経路が関わるかの検証を行なった。
単球のNF- κ B経路を活性化する物質毎にそれが変異NOD2が炎症の制御にどの様に関わるかに着目して,ブラウ症候群が肉芽腫を形成する病態解明を目指すともに,ブラウ症候群の治療を行う上でのターゲットとなる機序を明らかにすることを目指している。幸いにもリン酸化されたタンパク質に対する抗体が既に市販されており,この抗体を用いてwestern blotting法にて,リン酸化プロテオミクス解析の結果の制限を試みているが,実験系の感度の問題か再現性の確認には至っていない。技術的な問題克服には,かずさDNA研究所の小原先生や医薬基盤研・創薬標的プロテオミクスプロジェクトの足立先生の助言を得て進めている。また,最近特発性のサルコイドーシスの治療にJAK阻害剤が有効であることが報告されたことから,我々の実験系においても NOD2の誘導にIFNγを用いていることから,この薬剤の作用点にも着目して解析を行なっていく。
研究は当初の計画どおり実験を実施することができ,また初年度に予定した成果を確実にあげることができてるが,2020年4月より所属先が京都大学へと移動する事になったことから,必要となる試薬や消耗品についての調整が必要となっているため。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件)
Children
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