研究課題/領域番号 |
19K08785
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
岩尾 泰久 国立感染症研究所, ハンセン病研究センター 感染制御部, 研究員 (90813684)
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研究分担者 |
中田 登 国立感染症研究所, ハンセン病研究センター 感染制御部, 室長 (70237296)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | らい菌 / 薬剤耐性 / 一塩基多型 / 少菌型 / 多菌型 / Nested Multiplex PCR / アンプリコン解析 |
研究実績の概要 |
ハンセン病の原因菌であるらい菌は人工培養できないため、薬剤耐性の診断等はDNA検査に依存している。ハンセン病患者由来の臨床試料には、らい菌DNAは微量しか含まれておらず、ヒトDNAが多量に混在するため、らい菌の遺伝子解析では標的遺伝子を多量に増幅できる実験系が不可欠である。本年度では、臨床試料から効率的に増幅できる実験系として、らい菌の薬剤耐性変異5カ所と84カ所の一塩基多型(SNP)による型別を一度に決定するNested Multiplex PCR法(nmPCR法)と次世代シーケンスによるアンプリコン解析を併用した遺伝子解析法の構築を行った。らい菌の薬剤耐性変異においては、WHOのガイドラインで報告されたダプソン(folp1)、リファンピシン(rpoB)、フルオロキノロン(gyrA)と、近縁菌で報告があり、らい菌でも薬剤耐性変異が予想されるフルオロキノロン(gyrB)を標的とした。ハンセン病患者(少菌型及び多菌型)由来の臨床試料を用いて、全標的領域89カ所を一括で増幅するnmPCR法と、標的領域別ごとに三分割したnmPCR法の増幅効率及びアンプリコン解析について比較検討を行った。その結果、primer濃度を上げることが可能である標的領域別ごとに三分割したnmPCR法の増幅効率が良く、全領域に対して十分なRead数が得られた。2013年から2019年にハンセン病(両病型を含む)の行政検査で集められた臨床試料のうち、無作為に抽出した17サンプルについて、nmPCR法及びアンプリコン解析を実施した。17株のらい菌のSNP型別と薬剤耐性遺伝子変異を同定した。少菌型由来のらい菌の型別と薬剤耐性遺伝子変異を同定でき、今回開発したアンプリコン解析を併用したnmPCR法はらい菌の遺伝子検査分野で有用であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はnmPCR法の条件検討を行い、らい菌の薬剤耐性変異とSNP型別を同時に決定するアンプリコン解析を併用したnmPCR法を開発した。開発したnmPCR法を用いて、多菌型と少菌型を含むハンセン病患者の臨床試料から、らい菌の薬剤耐性変異とSNP型別を同定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降も、少菌型の症例数が少ないため、少菌型由来の臨床サンプルをできる限り収集する。多菌型と少菌型を決定付ける因子を探索するために、抗原や表層タンパク質関連遺伝子を標的としたnmPCR法を構築する。現在でも少菌型由来のらい菌のゲノム情報は少ないため、臨床試料から効率的ならい菌DNA抽出法を確立し、少菌型由来のらい菌のゲノム解析を実施する。らい菌のSNP情報を収集し、両病型決定因子を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度中にゲノム解析を実施できたらい菌の菌株数が予定より下回ったため、支出が予定より少額となった。また、英語論文についての校正費は、今年度末までに投稿準備が完了しなかったため,計上しなかった。 次年度は、本年度にゲノム解析を実施できなかったらい菌について、ゲノム解析を実施するため、ゲノム解析の費用に使用する。また、現在、準備中の英語論文の英文校正費に支出する予定である。
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