研究課題/領域番号 |
19K08797
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
宮川 史 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (00346024)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 全身性エリテマトーデス / インターフェロン制御因子 / 炎症性単球 / 炎症性樹状細胞 |
研究実績の概要 |
全身性エリテマトーデス(SLE)の疾患感受性遺伝子として、インターフェロン制御因子(IRF)7、8が知られているが、SLEの病態におけるこれらの転写因子の役割についてはよく分かっていない。我々はプリスタン誘発性SLEモデルマウスを用いてSLE発症機序におけるIRF7、8の役割を検討している。IRF7欠損マウスは、野生型マウスと同程度に糸球体腎炎を発症するが、自己抗体の産生は認められず、我々は既に自己抗体の産生にはIRF7/I型IFN経路が、糸球体腎炎等の臓器障害にはNF-kB経路が重要な役割を果たしていることを証明し報告した。本研究ではIRF8欠損マウスも用いて自己抗体の産生および臓器障害のメカニズムについて検討した。IRF8欠損マウスでは抗体産生は起こらず、糸球体腎炎の程度も野生型マウスより軽減するという結果が得られた。IRF7欠損マウスおよびIRF8欠損マウスの腹腔内細胞をqPCRをしたところ、I型IFNの産生は生じていなかった。また野生型マウス、IRF7欠損マウスにおいてはプリスタン投与により腹腔内おより腎臓に炎症性単球が浸潤してくるが、IRF8欠損マウスでは浸潤がみられないことも明らかとなった。野生型マウスおよびIRF7欠損マウスで浸潤してきた炎症性単球は自己抗原(二本鎖DNA;dsDNA)に反応して炎症性サイトカインを産生することも明らかとなった。以上より自己抗体の産生には炎症性単球由来のI型IFNが関与している可能性があり、臓器障害には炎症性単球由来の炎症性サイトカインが関与している可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順調に進んでいる。現在、抗体産生に至る抗原提示のメカニズムを明らかにするために、炎症性単球が樹状細胞に分化し、自己抗原に反応することを実験的に明らかにしている。
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今後の研究の推進方策 |
炎症性単球は組織に浸潤すると樹状細胞(DC)に変化することが分かっている。 そこで炎症性単球が組織に浸潤した後DCに変化するかをしらべるために、野生型マウスとしてCD45.1マウス(donor)を用い、プリスタン投与後2週目のCD45.1マウスの腹腔内より、炎症性単球をsortingにより分離する。分離したCD45.1陽性の炎症性単球をプリスタン投与14日後の野生型マウス(host)に移入し、1週間後に脾臓を抗CD45.1抗体とともにDCマーカーで染色後、フローサイトメーターで解析することで同定する。同様の実験をdonor->hostの組み合わせとして、CD45.1+IRF7欠損マウス->IRF7欠損マウス、CD45.1マウス-> IRF7欠損マウス、IRF7欠損マウス->CD45.1マウスでも行い、DCへの分化がcell-intrinsicであることを証明する。hostの脾臓の凍結切片を作成し、donorおよびhost由来のDCを抗CD45.1抗体と抗CD11c抗体を用いて2重染色することで局在を明らかにする。さらに炎症性単球がSLEの病態に関与しているかを検討するために、移入後1週間のhostマウスの脾臓を、自己抗原であるdsDNA抗原で刺激することで、炎症性単球由来のDCが炎症性サイトカインを産生するかをTNF-a、IL-6、IL-1a、IL-1bの抗体で細胞内染色をすることにより確かめる。
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