研究課題
我々は既にプリスタン誘発性全身性エリテマトーデス(SLE)モデルマウスを用いて、自己抗体の産生はインターフェロン制御因子(IRF)7/I型インターフェロン(IFN)経路に、臓器障害はNF-kB経路により制御されていることを報告した。I型IFNの転写に関与するIRF7を欠損したIRF7欠損マウスでは、野生型マウスと同程度に糸球体腎炎を発症するが、自己抗体の産生は認められない。一方、I型IFNとNF-kBの両者の転写に関与するIRF8を欠損したIRF8欠損マウスでは、抗体産生は起こらず、糸球体腎炎の程度も野生型マウスより軽減した。我々は野生型マウス、IRF7欠損マウスではプリスタン投与後に組織への炎症性単球の浸潤がみられるが、IRF8欠損マウスではみられないことを見出した。さらに野生型マウス由来の炎症性単球は、自己抗原(二本鎖DNA;dsDNA)に反応してI型IFNと炎症性サイトカインを産生するが、IRF7欠損マウス由来の炎症性単球は炎症性サイトカインのみ産生することも明らかにした。炎症性単球は時間とともに脾臓において樹状細胞に分化し、dsDNAに反応した。この樹状細胞への分化は、系統の異なる宿主においても生じたことより、cell-intrinsicであることも明らかにした。本研究によりプリスタン投与により生じるIRF7欠損マウスとIRF8欠損マウスの形質の差異が、炎症性単球から産生されるサイトカインに起因していることが明らかとなった。SLEはフレアを繰り返す疾患であり、単球の可塑性がSLEの病態形成やフレア時の症状に関与している可能性が考えられた。
1: 当初の計画以上に進展している
順調に進んでおり成果を国際誌に発表した。
炎症性単球は感染や炎症時に骨髄より組織に動員され、局所で微生物の排除に関与すると考えられていたが、自己免疫疾患の病態に関与しているかどうかについてはあまり分かっていなかった。本研究で自己免疫疾患であるSLEにおける炎症性単球および炎症性樹状細胞の役割の一端が明らかになったことより、今後は治療に応用できるかを検討したい。具体的には、炎症性単球の組織への遊走やホーミングを阻止する化学物質や薬剤を用いることで、SLEの症状、特にフレアを抑制することができるかどうかの検討を進めていきたい。さらに他の自己免疫疾患や炎症性疾患においても炎症性単球が病態に関与している可能性があるため、他の疾患モデルマウスを用いて検討していく。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (18件) (うち国際共著 1件、 査読あり 18件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件)
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