これまでの研究で、希釈したガドリニウム造影剤を培養細胞に負荷すると、細胞数が増加することは解っている。しかし、ガドリニウム造影剤にはガドリニウムイオンの他にもキレートなどが混入しており、純粋なガドリニウムイオンではない。その為、培養液内で本当にイオン化されたガドリニウムが、細胞増殖に影響をもたらしているか不明であった。 そこで、これまでガドリニウム硝酸液を希釈や、ガドリニウム水溶希釈しての実験を試みたが、思うように進んでいない。本研究のきっかけとなった腎性全身性線維症ではガドリニウム造影剤(ガドジアミド)の使用は、その造影剤が生体内でガドリニウムイオンとキレートの結合の分離が早いためと考えられている。そのため製造会社にガドリニウムを含まない、造影剤の提供を依頼したが、入手困難な状況である。 このような状況で、思うように実験が進行していないが、キレートとの結合時間が長く、腎性全身性線維症の発症原因として報告が極めて少ないガドリニウム造影剤(ガドテル酸メグルミン)と、ガドジアミドと比較しガドリニウムイオンによる細胞への影響について検討した。過去の報告で、腎性全身性線維症の報告が少ないガドテル酸メグルミンと、報告が多いガドジアミドを比較した結果、ガドジアミドでより未分化マーカーの発現亢進を確認できた。 本年度では細胞増殖能の違いについて検討し、細胞増殖においてもキレート結合力が弱いガドジアミドでより細胞増殖が強かった。純粋なガドリニウムイオンの線維芽細胞への影響を評価することは困難であったが、キレート結合力が異なるガドリニウム造影剤で解析することより、ガドリニウムが、線維芽細胞への細胞増殖と未分化へのリプログラミング効果が強く疑われる。
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