現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
長期培養に最適な条件を検討した。著者らは2021年に幹細胞のstemness、上皮細胞の恒常性を失った腸管オルガノイドにおいてRho-associated kinase(ROCK)の過剰な活性が起きていることを報告し、ROCK阻害薬の添加により失われた上皮の恒常性が回復することを報告した(Ouchi et al, Cells 2011)。この知見をもとに基本的な培養条件にROCK阻害薬を添加し、長期培養が可能かを検討した。具体的には選択的ROCKⅠ阻害薬である10μM の1-Phenyl-1,2,3,4-tetrahydro-4-hydroxypyrrolo[2.3-b]-7-methylquinolin-4-one(Blebbistatin)、0.31μM の(S)-(+)-2-Methyl-1-[(4-methyl-5-iscquinolinyl) sulfonyl]-hexahydro-1H-1,4-diazepine dihydrochloride(H1152)を培養液中に添加し、継代培養を試みた。結果、継代培養される率は若干ながら改善が見られたが、明らかな有意差をもって改善はしていない。 皮膚オルガノイド上皮の恒常性について、表皮剥脱毒素を用いて評価した。表皮剥脱毒素はそのタンパクサイズからタイトジャンクションを通過する事はできないことが証明されている(Ouchi et al, J Exp Med 201)。表皮剥脱毒素は表皮間の接着分子であるデスモグレイン1を切断するため、培養液に添加した場合、細胞間隙を拡散し、顆粒層での棘融解を起こすはずである。具体的には4μg/mlとなるように表皮剥脱毒素を培養液に添加し1時間培養し、形態変化を確認した。予想に反して、表皮剥脱毒素存在下に培養した皮膚オルガノイドでは内腔側の存在する顆粒層での棘融解は確認されなかった。
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